Vol.323:麦の寅 GACHI SOBA DOJO

2024年6月30日オープン


 東海屈指のラーメン激戦区「豊橋」で6月30日に新たな実力店が登場する。屋号は「麦の寅 GACHI SOBA DOJO」。店SNSで「ガチ麺道場直系継承店」と謳う新店で、近年の東海ラーメンシーンを力強く牽引してきた上野大将の新ブランド店だ。上野大将から新店の情報をかなり早くから教えてもらっていたので、今回の新ブランド店を任されることになった鈴木店主に話を聞かせてもらい、上野大将からも久しぶりに色々聞かせて頂いた。



◆店舗情報

麦の寅 GACHI SOBA DOJO

愛知県豊橋市東田町158

X https://twitter.com/muginotora

オープン日:2024年6月30日



◆上野大将インタビュー

- 今回のお店をしようと思ったきっかけは?

「僕のところには色々な話が来るんですけど、ラーメンを覚えたいとか、ラーメン屋をしているけど自家製麺をしたいので教えて欲しいとか、そういう話も結構あるんです。それで今まではちょっと仲良くなるとすぐに教えたりしていたんですが、上辺だけでなくきっちりと教えてあげたいと思い、僕をサポートしてくれる方達と別会社を立ち上げて、ちゃんとした約束事やルールを守って頂いてしっかりと教えましょうという形になりました。そんな中で鈴木店主と知り合うことになりました。」

 

- 仕事を通しての出会いなんですね。

「鈴木店主は元々、地元の有名な和食店で働いていた方だったので僕も知っていた方なんです。麦の空にも何度か来て頂いていて『麺が美味い』と褒めてもらっていて、それから『僕でもできますか?』と問い合わせがあり、『じゃあやってみましょうか?』と急ピッチに話が進みました。まだ2ヶ月前くらいの話です。」

 

- 屋号「麦の寅」の由来は?

「鈴木店主が以前にしていたお店の屋号に寅が付いていて、本人も使いたいと希望したので『麦の寅』で決まりました。」

 

- ガチ麺直系継承店の意味は?

「今まで僕が教えても独自性のことをする方が多かったんですが、僕が現場に復帰して1年近くになるんですけど、僕の今の既存のレシピを鈴木店主に継承していくという形になります。僕は常に新しい麺のレシピを立ち上げてどんどん進んでいくんですけど、僕が最近これは凄いなという麺ができた時にたまたま彼と出会って、『こんな麺は初めてだ!』と僕を煽てるから(笑)、『じゃあこれでする?』となりました。」

 

- 「麦の寅」の看板となる極太手揉麺とは?

「自家製麺のお店が増えてきていますが、みんな求めるところは同じ感じになっているのかなと思っています。もち小麦が流行り出した頃に僕も早い段階から扱っていましたが東海3県で派生が凄くて、今は関東圏でも凄くて、それでもち小麦はもう受注ストップになっているんです。流行る前から扱っていた僕に対してはまだ何トンという風にまわしてくれることを約束してもらっています。そんな時に昔やっていた"もち大麦"をもう一回できないかなと思い始めました。只、もち大麦は粉砕が難しいんです。自分で粗く粉砕して限定では出していたんですけど、今回、凄く画期的なことなんですが、もち大麦を小麦と同じ粒子で挽いてもらうことが実現したんです。それを練り込んだら今まで"もち小麦"だけだった麺がよりフワッと感が増したんです。僕はエアリー麺と呼んでいるんですけど、空気のような、あっという間に口の中で溶けてなくなってしまう感覚なんです。」

 

- 空気のような、溶けてなくなる?

「ふんわりで、ツルツルモチモチしている麺です。」

 

- 「麦の寅」で販売する商品は?

「いつも僕は麺ありきでスープを合わしていくんです。"麦の空"中華そばの乾物系スープのレシピをもう一回構築し直してやっと納得いくものが最近できたんです。そのスープを今回の極太手揉麺と合わせた時にバチっと噛み合ったんです。」

 

- 商品名は?

「『極太手揉拉麺』で塩だけです。麦の空は中華そば、二代目は塩そばと醤油そばなので、新店は漢字でいこうかなと思いました。他はその麺を使ったまぜそばと冷香麺。当面はその3本でやります。つけ麺も券売機にはラインナップしますけどいつ始めるかは未定です。サイドは麦の空と同じです。」

 

- 場所は豊橋に拘ったんですか?

「そういう訳ではないんですが、豊橋は広いので二軒くらいはいいのかなと思いました。駐車場は店の前に10台あります。」



◆鈴木店主インタビュー

- ご出身は?

「豊橋市です。」

 

- 料理の世界に入ったのは?

「大学生の頃のアルバイトから料理の世界に入って、ずっと和食の道を歩んできました。もう20年以上になりますね。」

 

- ラーメンは好きだったんですか?

「個人的にラーメンは大好きでしたし、和食のお店で働いていた時も魚料理メインのお店だったので、仕入れた魚で出汁をとってオリジナルのラーメンを出したりしていました。」

 

- 上野大将と一緒にやることになった経緯は?

「もちろんミシュラン一つ星を受賞された時からその存在を知っていましたが、前職を辞める頃に麦の空へ食べに来て『なんだこのラーメンは?』と衝撃を受けたんです。」

 

- 具体的には?

「今まで色んなラーメン店で食べてきて『ラーメンとはスープありき』と思っていたんです。スープに麺が合えば美味しいラーメンが完成すると思っていたんですけど、麦の空で食べた時『あっ、麺が美味い。麺が主役で、麺にスープが寄り添っている』と思いました。初めてラーメンを食べて感動したんです。」

 

- 感動してから?

「最初は一ファンとして通っていたんですが、共通の知り合いがいて、僕が前職を辞めるタイミングで大将(上野さん)を紹介して頂きました。上野大将の会社で一緒にする料理人を募集しているという話でした。」

 

- 和食からラーメンに来て不安は?

「ラーメン屋さんでは働いたことがないので不安は凄くあります。和食時代は2時間とかの時間を通して評価して頂くんですが、ラーメン屋さんでは僅か30分ほどで評価して頂くことになるのでよりシビアな面があると思います。」

 

- プレッシャーも楽しめる?

「同じ料理の世界でも全く違う世界だと思っていますので楽しみですし、自分が惚れた味、自分が感動した味をより多くの方に食べてもらえることがとても楽しみです。」

 

- 鈴木店主が大事にしていることは?

「前職からずっと大事にしていることは、安心安全なものを提供することです。添加物不使用、仕入れた素材の全て、小麦から野菜やお肉まで見える素材(誰が、どこで、どうやって作ったか見える素材)を使うことです。安心安全な商品を提供して、お客さんに感動してもらえるお店を目指していきたいと思っています。」


◆上野大将 過去記事


 (取材・文・写真 KRK 令和6年6月15日)