今回取材をするのは愛知県犬山市で2024年3月にオープンした「せいめん 未さく」。店主は激戦区「春日井」の人気店での修行を経て独立開業された方だ。SNSで見たラーメンの美しさに目を奪われた方も多いだろう。国宝「犬山城」の城下町を選んだ理由や、予約制営業スタイルについてなど色々聞いてみようと思う。「せいめん 未さく」井上店主にKRK直撃インタビュー!
- ご出身は?
「愛知県名古屋市です。」
- 昔からラーメンは好きだったんですか?
「はい。昔から好きでした。思い入れがあるお店といえば小学一年生くらいに父親に連れて行ってもらった万楽さん(中華そば 万楽)。そこが僕がラーメン好きになったきっかけのお店です。まだ先代の方が作られていた頃でした。」
- 将来ラーメン屋をしたい気持ちは?
「まだ全然考えていませんでした。大学を卒業して住宅会社に就職してそこで10年間ほど働いていました。会社勤めをしながらもずっとラーメンは好きで、休みの日はラーメン食べ歩き。そして出張で他の地域へ行くことになれば、食べログなどで事前に出張先のラーメン屋をリサーチしていました。」
- 食べる側から作る側になるきっかけは?
「大学卒業後に就職した住宅メーカーで勤めて10年ほど経った時から、仕事に対して情熱を持てていないことに気づき、やりたいことを仕事にしていないからなのかと自問自答するようになりました。」
- 井上店主のやりたかったことは?
「イチロー選手の語録の中に、小学生への贈る言葉として『好きなことを見つけて欲しい。僕は単純に好きなことが野球だったから、只、好きでしているだけ。努力しているとか言われるけどそんなつもりはない。好きなことを見つけるとどんな壁があっても乗り越えられると僕は思います』というのがありました。その言葉を聞いた時に悩みました。ちょうど子供ができたタイミングだったので、20年後、30年後に子供にどんな仕事をしていると胸を張って言えるんだろうか?それで自分が好きなことを考えると、浮かんだのがラーメンでした。一番情熱を持ってやれるんじゃないかと思いました。」
- どこかで修行をしたんですか?
「以前春日井市に住んでいた時によく食べに行っていた、はる樹さん(中華そば はる樹)が独立志望者を募集していたんです。それで家族に相談して会社を辞めてはる樹さんへ入りました。」
- 初めてラーメン屋で働いてどうでしたか?
「最初は接客から入りましたが全てが大変でした。はる樹さんでの修行と同時に自作ラーメン作りも始めました。3年で独立すると面接時にオーナーにも話していたので、それまでに自分のラーメンを完成させないといけないですからね。」
- 井上さんの作りたかったラーメンは?
「会社を辞める前に飯田商店さんへ食べに行って衝撃を受けたんです。ラーメンももちろん美味しかったんですが、ラーメン以外の全てに衝撃を受けました。自分が今まで思っていたラーメン屋と違って、『こういうラーメン屋もできるんだ!』と驚きました。ラーメンってファーストフードのイメージが昔からありますが、その域を超えて料理屋というお店もできることを知りました。」
- 3年後へ向けて順調に進めたんですか?
「はる樹さんで学びながら、自分の味作りにも没頭していました。最初、全然できなかったんですけど、はる樹さんの定休日に弟子が『週一ラーメン木曜日』として二毛作営業をすることがあるので、僕も一年経った頃から限定を作らせてもらっていました。そこで自分のやりたいラーメンを模索しながら作っていました。」
2024年3月9日オープン
- 国宝「犬山城」の城下町を選んだ理由は?
「観光地で発信して、ラーメン好きだけじゃなく一般の方達にも広げたいと思っていました。だから沢山の一般の観光客が店の前を通る、こういう場所を探していました。」
- 屋号「せいめん 未さく」の由来は?
「自家製麺に拘りたいと考えていましたが、自家製麺という文字は屋号にするには堅いなと思ったんです。製麺って難しいし、同じ麺が作れないというくらい色んなものに影響を受けるんです。それで『生きている麺』と『自家製麺の製麺』をかけて"せいめん"を思いつきました。"未さく"は僕が未来という言葉が好きで使いたいと考えていたので、『未来に向かって作り続けたいな』という意味も込めて"未さく"。常に良いものを作り続けていないとお客さんが離れてしまうので、そういう原点を忘れないようにする気持ちも含まれています。」
- 商品紹介をお願いします。
「愛知県では日本三大地鶏の一つ"名古屋コーチン"があるのに、名古屋コーチンに徹底的に拘ったラーメン屋が無かったので、名古屋コーチン100%で勝負しようと思いました。名古屋コーチンも問屋さんから買っているわけじゃなくて、自分で3箇所の養鶏場へ通って関係作りから始めました。それで毎週2箇所の養鶏場さんへは自分で行って直接仕入れています。」
- 合わせている麺は?
「あっさりの名古屋コーチン醤油ラーメンで、名古屋コーチンをより感じられる麺を合わせたいと思いました。それで細麺で喉越しがよく、コシがあってスープによく絡む麺を作っています。」
- 使っている醤油は?
「南蔵商店さんのたまり醤油など愛知県産醤油を3種類、名古屋コーチンが活きる醤油の構成にしています。」
- お肉への拘りも伝わってきますね!
「愛知県産に拘りたいので、自分で探した中で一番気に入ったのが田原市の田原ポーク。田原ポークの脂肪の融点は人間の体温より低い35度なので、体内に蓄積されずに溶け出すのでさっぱりと食べられるんです。食材は全部自分で探し歩いています。」
- 予約制で営業している理由は?
「僕もそうなんですが並ぶのって嫌じゃないですか?予約をして安心して食べて頂きたいと思っています。杯数はどれだけ忙しくても1日のMAXを72杯にして、一杯一杯にきっちり取り組めるように心がけています。」
- 井上店主が一番大事にしていることは?
「お客さんに感動してもらうことです。僕がラーメン屋をやろうと思ったきっかけも、美味しいものを食べて感動した時、めちゃ幸せだなと思ったんです。今は自分が作ったものでお客さんが感動してくれたら凄いやりがいがあります。ラーメンが美味しいだけじゃなく、サービス、空間作り、全てがバシッとハマった時にお客さんが感動してくれると思って毎日取り組んでいます。」
◆店舗情報
せいめん 未さく
愛知県犬山市東古券312-2
instagram https://www.instagram.com/seimenmisaku/
オープン日:2024年3月9日
(取材・文・写真 KRK 2024年6月2日)