Vol.306:Ramen Dream 桐麺

2023年10月20日オープン!


 大阪屈指の大行列店だった名店「桐麺」が閉店し、兵庫県加西市へ移転。突然の発表だったのでラーメンファンの驚きも相当のものだったと想像できる。移転に関しては桐谷店主からかなり早い段階で聞いていたが、その理由については詳しくは知らないので約11年ぶりに加西市までやって来た。「Ramen Dream 桐麺」桐谷店主にKRK直撃インタビュー!


- 大阪であれだけの行列店だったのに、加西市へ移転をしようと思った理由は?
「考え始めたのは約2年前ですね。大阪での桐麺はお陰様で多くのお客さんに応援して頂いていました。そして弟子達が育ってくれて毎日の営業をしっかりやってくれていたので、僕はマネージャーだったじゃないですか!それが面白くない。自分で準備、仕込み、営業、片付け、掃除、全てをするお店をやりたいと考え始めました。それが一番最初のきっかけでしたね。」

 

- 移転への不安とかは?

「今、41歳なんです。50歳とかになってからするんじゃなく、体が動く今の内にやりたいことを全部したいと思いました。それでまずは妻に相談したんですよ。」

 

- それはまだ場所とかは決まっていない段階で?
「はい。とにかく自分で店をやりたいと妻に相談しました。」

 

- 桐谷さんに相談されて、女将さんはどう返事したんですか?
・女将さん「最初、田舎に移転すると言った時は嫌と言いました。」

・桐谷店主「この規模、200坪を買おうと思ったら田舎に行くしかないじゃないですか!住居兼店舗で、歩いて10秒でお店へ入れるんです。」

- 嫌と言われながらも、あきらめずに動いていたんですね。
・桐谷店主「自分で西脇市、加東市、加古川市など車で探しまわっていたんです。一回、他の所が見つかったんですが、妻にすぐに無理と言われました(笑)」

・女将さん「だって、見渡す限り全て田んぼだったんですよ。私、車の免許が無いから自転車ですからね。買い物とかどこへも行けなくなりますから(笑)」

- それは絶対無理ですよね(笑)
「その後、加西市へ来た時に、この場所にあった田んぼに『土地売ります』と書いた旗が立っていたんです。なんて良い土地だと思ったので、すぐに妻を連れて来ました。近くにスーパーがある、イオンもある、丸亀製麺もある。商売できると思いました。妻も『ここならいい』と言ったのですぐに土地を買ったんです。」

- 展開が早い(笑)。その時点で桐麺のお弟子さん達には?
「その段階ではまだ誰にも言ってなかったです。それから加西市で建築会社とかと打ち合わせが始まり、家の準備、店の準備ができてきた時に桐麺スタッフに『俺は加西市という所で自分のお店をしたい』と話しました。」

- お弟子さん達と話した内容は?
「弟子達に、この場所でこのまま桐麺をやるか、それぞれ独立するか、考えてもらいました。話し合った結果、3人の弟子がそれぞれ独立することになりました。それで桐麺は閉めようと思ったんですけど、多くの常連さん達から本店だけでも残して欲しいと言って頂いたので、ラーメン屋をしている友人に相談して十三店だけ桐麺総本店として残せることになりました。」


2023年10月20日オープン!


- 屋号「Ramen Dream 桐麺」の由来は?

「元々は9年前、JET(ラーメン人生JET)から独立する時にRamen Dream 桐麺でしようと決めていたんです。でも保健所へ名前を申請しに行った時に、土壇場で恥ずかしくなって桐麺で申請してしまったんです。後々、それをずっと後悔していたんです。それで今回、元々したかった名前にしました。」

 

- Ramen Dream 桐麺の商品は?
9年前、桐麺は醤油、塩、味噌の3つから始めて、それから増やしていったんです。今回新しく加えるのは『桐麺加西ハッピーラーメン』と『桐麺にんにくラーメン』です。



- 新しいトップメニュー(券売機左上)となる「桐麺加西ハッピーラーメン」の紹介をお願いします。
「播州百日鶏(卵から孵化して約100日間肥育される播州の鶏)のスープに少し魚介を足している清湯です。醤油は元々使っていた足立醸造さん(兵庫県多可郡)の醤油に、加西市の高橋醤油さんの醤油を加えています。」

- ハッピーラーメン誕生のきっかけは?
「お客さんが求めているものと、僕が求めているものは少し違っていると思いました。お客さんはラーメンが食べたい、ラーメンが食べられたらいいんだという方も多い。高齢の方がこってりしたラーメンを食べたいかといえばそうじゃない。そういうお客さんには桐麺しょうゆとか桐麺味噌とかはオーバースペックだと思うんです。それならお客さんが満足できるハイスペックなラーメンを、お客さんが求める価格で作りたいというのがハッピーラーメンのきっかけなんです。」

- この土地のお客さんにも桐麺のラーメンを楽しんでもらいたいという想いが込められた商品なんですね。
「はい。加西市でどういうお店をしたいと考えた時に、近所の皆さんに来て欲しいし、大阪の桐麺を応援してくれていたお客さんにも来て欲しい。だから、ハイスペックとオーバースペックのラーメンをどっちもしようと決めたんです。」

- もう一つの新作「桐麺にんにくラーメン」は?
「白湯に魚介を合わせて、擦りおろしたニンニクを加えたがっつり系です。ガッツリしたのを求めているお客さんもいます。僕はラーメンの総合格闘家じゃないですけど(笑)、結局、あっさりもこってりもがっつりも僕は全部やりたいんです。」

 

- Ramen Dream 桐麺の麺は?
「大阪時代とはけっこう変えましたね。ハッピーラーメンは切刃26番の極細なんですよ。それ以外のラーメンは今までと番手は一緒の16番、つけ麺まぜ麺は10番です。3種類の麺を打ちます。全部配合はガラッと変えています。もう小麦粉から変えています。」


桐麺加西ハッピーラーメン


- 広い店舗でやりたかったことを少し紹介して下さい。
「ゆで麺機を火力が違うのを2台設置しました。茹で方でめっちゃ変わりますから、いろんな茹で方を研究していこうと思っています。趣味の領域ですね(笑)。そして9年越しに仕入れた食洗機。桐麺では手洗いでした。」

- 奥の部屋は?
「スープ室も熱がフロアーに出て熱くならないように別室に作ったんです。桐麺本店とかメッチャ暑かったですからね。営業と仕込みは完全別日にすることにしました。週四の昼営業のみで、他の日を仕込みなどに使います。」

- 桐谷さんと言えば麺。製麺室への拘りは?
「スープ室の裏に製麺室を作りました。もう秘密基地のような密室にしました(笑)。エアコンって空気を吸って空気を出すじゃないですか。それをこっちから吸って冷たいのを出すだけにして、温度と湿度を管理できるように断熱材を強めにして密室を作りました。」



- こちらのお店は夫婦二人だけで営業するということですか?
「はい。月水金日の週4営業で、11時〜14時です。仕込み、掃除、営業、片付け、全て夫婦二人で全部します。今のところスタッフを雇うことは考えていません。」

 

- いよいよ自分の夢へ動きだすんですね。
「数日前、初めてプレ営業を2時間だけしたんですけど楽しかったですね。やっぱりこれがラーメン屋だなと思いました。弟子達に営業をさせて、後ろで味作りや麺作りだけをしていても面白くない。やっぱり麺場に立って、食べているお客さんを見れるのが楽しいです。」

- 最後に桐谷店主が大事にしていることを教えて下さい。
「9年前にオープンした時に家族のことを疎かにしたんです。だから今は家族を何よりも大事にしていきたいです。家族との時間をしっかり作っていきたいと思っています。
 そして前回の取材でも言いましたけど、自分で作ったラーメンを自分で食べて美味すぎて気絶する。その目標はずっと追いかけているんです。その目標のために、従業員にやってもらうだけじゃなくて、自分で全てやらないといけないと思いました。自分が作ったラーメンをお客さんが食べているのを見れることが何より嬉しいです。現場に立って、僕が作ったものを食べてもらい、それを見届ける。それを大事にしていきたいです。」



◆店舗情報

Ramen Dream 桐麺

兵庫県加西市北条町西高室1000

Xhttps://x.com/kirimen1

instagram:https://www.instagram.com/kiri_men_/

オープン日:2023年10月20日


◆桐谷店主への前回の取材記事


 (取材・文・写真 KRK 令和5年10月4日)