Vol.304:麺屋伊藤


 今回取材をするのは愛知県犬山市で2023年7月20日にオープンした話題の新店「麺屋伊藤」。オープン前からSNSを中心に話題となり、オープン2か月目で最新のラーメンウォーカー東海版の表紙に抜擢されるという過去に例を見ない超新星だ。犬山市へは国宝「犬山城」観光で以前に訪れたことがあるが、ラーメン目的は初めてとなる。「麺屋伊藤」伊藤店主にKRK直撃インタビュー!


- 生まれ育ったのは?

「愛知県の小牧市です。19歳まで小牧市にいました。」

 

- 元々、ラーメンを食べることが好きだったんですか?

「若い頃は特にラーメンだけを好きってことはなく、食べる機会もあまり無かったですね。」

 

- ラーメンに興味を持つ前は何をされていたんですか?

「学生時代は何か人のお世話をすることを仕事にしたいと思っていたので介護か保育士をしたいと思っていました。高校の時にヘルパーの資格をとっていたんですが、高校卒業時に色々考えた上、保育関連の大学へ進みました。でも大学に入ってから給料面とか色々知っていく中で不安が出てきたので、一年生の途中で自主退学しました。」

 

- 大学を離れてからは?

「高校の時から和食麺処サガミでアルバイトをしていたので、そのまま大学を辞めた後もサガミで働いていました。ホールからキッチン、蕎麦打ち、全部やらせてもらっていて、その頃に飲食業の楽しさを知りました。」

 

- 当時一番興味があったことは?

「当時、サガミでのアルバイトのお金を全て使っていたほど服が好きだったんです。それで20歳になる頃に『さすがに20歳でフリーターは駄目だろ』と思ってアパレルの会社に就職しました。ファイブフォックスというコムサイズムなどのブランドを展開している会社で、僕は地元小牧市のイオンに入っているコムサイズムで働いていました。1年経った頃に一宮店へ異動になり、個人の売上でももっと上を目指そうと頑張っていたんですけど、収入面や会社の方針などで色々と考えることがあって、自分で何かしたいと考え始めました。」


- 自分でしたいと浮かんだのは?

「その時はまだラーメンが好きとかは全く無くて、色んな方に相談して何がしたいか模索しているところでした。そんな中、親戚の叔父さんがフジヤマ55の社長さんと知り合いだったので話す機会を作ってもらいました。当時は色んな方に相談して話を聞いていたんですが、自分が一番ワクワクしたのがフジヤマ55の社長さんから聞いたラーメン関連の話だったんです。自分が好きなものって逆に知り過ぎていたので、全くラーメンをことを知らなかったのでとても興味を持ちました。」

 

- フジヤマ55に入社してからは?

「同グループの鶴舞の一刻屋で3年半ほどお世話になりました。元々、3年経ったら独立したいと社長さんには話していたんですが、ちょうど辞める頃にコロナが始まってしまいました。そして飲食の責任者としての経験がまだ無いのと、一刻屋の商品の作り方しか知らないので不安に思っていたんです。その時に岐阜のイオンモール各務原にフジヤマ55の新しいお店がオープンするということだったので、社長に修業を延長してその新店で店長をさせて欲しいとお願いしました。各務原店で2年間、貴重な経験を積ませて頂きました。」

 

- 独立へ向けて最後の修行ですね。

「そのお店の商品以外も勉強したかったので、自分で試作を続けていて、イオン各務原店で自分が作った限定メニューを販売させてもらっていました。自由にさせてもらえる会社だったので独立に向けてとても貴重な経験を積ませて頂きました。そしてフジヤマ55の店舗が沢山ある中で、限定をコンスタントにしている店は珍しいということで、ラーメン好きな方達が注目して下さるようになっていきました。」

 

- 限定をしながら自店の商品を決めていったんですね?

「当時はその時にお店で使用している食材の範囲内で限定メニューを作らないといけなかったので、どうしても限界がありました。そして商品作りの相談をする相手もいなかったので、自分で休みの日はラーメン屋さんを食べ歩いていて、ネットでも色々と情報を集めて、自店のオリジナル商品を作り上げていきました。」


2023年7月20日オープン


- この場所は?

「フジヤマ55を退社後、一年くらい物件を探していたんです。当初は地元小牧市で探していたんですが、なかなか見つからなかったですね。それから範囲を広げて、妻の実家がある鵜沼と自分の地元小牧市の間辺り、江南市や犬山市などでも探し始めたらこの物件と出会いました。駐車場もあるし、国道41号線沿いと言ってもいいほどの立地なのでここに決めました。」

 

- 屋号「麺屋伊藤」の由来は?

「だいぶ前に決めていましたね。醤油ラーメンをメインでお店をしたいと思っていたんですが、町中華みたいな感じよりも、ちょっとお洒落で綺麗なお店をイメージしていました。それでちょっと堅めな名前がいいなと思ったので、自分の名前を入れて麺屋伊藤にしました。伊藤家の家紋も使用しています。」

 

- 醤油でしようと決めていた理由は?

「修行時代から決めていました。色んなラーメンを食べ歩く中で、どんな時でも食べたいと思ったのは結局、醤油ラーメンだったんです。流行り廃りがある中で、醤油ラーメンはずっと定番として残っていますから。」



- 麺屋伊藤の商品紹介をお願いします。

「醤油と白醤油の2本でしていて、どちらも醤油自体は4種類ブレンドしています。濃口、薄口、たまり、魚醤です。スープは鶏メインで更に豚の旨みも加えて、乾物は昆布2種、椎茸、煮干し、鰹節、鯖節など使用しています。それらのバランスをうまく組み立てながらの一杯に仕上げています。醤油はトータルバランスを考えて万人受けするような味つけにしています。白醤油は特有のツンッとした匂いをうまく消しつつ、愛知県で好まれる少し甘めの味付けにして、スープ自体の旨みが後追いで現れるような感じに仕上げています。」

 

- ネギでなく玉ねぎを使っているのは?

「修行先だった一刻屋の高山ラーメンはスープに玉ねぎを使うので、僕の中でラーメンに玉ねぎを使うことが染み込んでいたんです。独立へ向けて他のジャンルの料理も食べて勉強していた中で、味だけでなく食感も大事だと思っていました。それで玉ねぎを大きめにカットしてシャキシャキ感を出して、苦味で口をリセットし、後半に甘みがスープに溶け出して味変するところまで計算しています。」

 

- 合わせている麺はしっかりした食感の麺ですね。

「オープン当初は多加水の麺でしていたんですけど、啜り心地とかで低加水の方が合うなと思ったので、低加水の麺に変更したんです。」


- オープン前からかなり話題になっていましたね。

「各務原で限定をしていた時からラーメン好きの方達が気にして下さっていて、皆さんの口コミでオープン情報を広げてもらえたことが大きいと思います。」

 

- 伊藤店主が一番大事にしていることは?

「お店って人に支えてもらいながらやっていけるものなのでお客様第一。お客様を大切にしながら、その中でもちろん働いてくれるスタッフも大事にして、人と人というのを一番に、これからも忘れずにしていきたいと思っています。」


◆店舗情報

麺屋伊藤

愛知県犬山市塔野地南ノ切121-21 鈴木ビル1F

X:https://x.com/menya_it0

instagram:https://www.instagram.com/menya_it0/

オープン日:2023年7月20日

 (取材・文・写真 KRK 令和5年9月18日)