今回取材するお店は静岡県浜松市の人気店「蔵前家」。横浜家系の老舗「六角家」姉妹店として2001年に東京浅草でオープンして以来、正統派家系のお店として多くのラーメンファンから愛されている名店だ。家系のお店を取材するのは初めてだし、いきなりの大御所への取材。ドキドキするが聞きたいことが山ほどある。「蔵前家」袴田店主にKRK直撃インタビュー!
- ご出身は?
「静岡県浜松市です。」
- ラーメンをするきっかけは?
「この店の隣が実家で、餃子屋さんなんです。小さい頃から手伝いをしていて、その流れで社員として働くようになりました。ある時に親から『ラーメンをもうちょっと頑張ってほしい』という話になって、自分がどこかの店でラーメンの修行をしに行くことになりました。」
- 修行先は色々と探したんですか?
「とりあえず横浜のラーメン博物館へ行けば全国のラーメンが食べられると思って、そこで色々食べていると六角家さんの味に衝撃を受けました。」
- 当時、家系とか知っていたんですか?
「まだその頃は家系ラーメンを全く知らなかったんですが、その当時、浜松にはしっかり炊いた豚骨ラーメン屋さんが無かったんです。それで六角家さんの味を浜松へ持って帰りたいと思いました。」
- 実家のお店とは全然違う環境になったと思いますが、入ってどうでしたか?
「もう驚きましたね。一日1000杯とか出るお店なのでやっていけるのかとても心配でしたが、当時、既に結婚していたので引くに引けないという気持ちでした。」
- 六角家での修行は何年ほど?
「面接の時に独立希望というのを伝えていて、『4年間しっかり働けば大丈夫だよ』と言われていました。六角家さんでは4年半ほどお世話になりました。」
- 自店をする場所は悩みましたか?
「当初は浜松へ戻ってくる予定でしたが、当時、(六角家の)ラーメン博物館のお店でも働いていたんですけど、3人で1000杯とか出ていたんです。『これ、自分一人で浜松でしたら大変なことになるかもな』と心配になりました。それでその頃は東京の東側にはまだ家系が無かったので、家内にも相談して浅草ですることに決めました。浅草ですることを六角家の社長にも相談して進めていき、2001年に浅草で独立開業しました。」
- 屋号「蔵前家」の由来は?
「蔵前駅の近くだったので、蔵前家としました。」
- 正式に独立する時、六角家さんから何か守ってほしいルールとかは?
「六角家さんの姉妹店としてオープンしたんですが、一切何も言われていないんです。六角家の社長は認めてもらえたら『何してもいいよ!』と言ってくれる方でした。」
- 浅草でオープンしてからの反響はどうでしたか?
「凄かったですね。六角家の姉妹店としてのオープンでもあるし、ラーメン博物館とかでも働いていたので、お祝いの花とかも多くの有名なお店の方から頂いていましたから。」
- それから8年後に、浜松へ戻ってきた経緯は?
「両親も浜松に住んでいますし、子供の小学校に入るタイミングもあったので、浜松へ戻ってくることが家族のためにいいのかなと思いました。そのタイミングを逃したら(小学校卒業時の)6年後になっていたと思います。」
- 当時の静岡ではまだ家系が認知されていなかったことへの不安は?
「知らない土地というわけではないので、関東で好かれる味とは違って、地元浜松で好まれる家系ラーメンを作ろうと考えていました。」
- 具体的には?
「豚骨臭さ、獣臭みたいなのをなるべく抑えるということと、塩分濃度、醤油とかも極力薄くすることですね。関東でしていた時はしょっぱめに作っていたんですけど、浜松ではトゲトゲしさをなるべく減らすように調整していました。」
- 当時と違って、最近は家系が全国に広がってきていますね。
「今はもうフランチャイズの店とか増えてきているので、六角家の本来の味へ寄せていく作業をしていってるところです。」
- 移転以来、静岡のラーメンシーンをずっと見てきて変化を感じますか?
「静岡県内のラーメンファンがとても増えてきていますね。本当にありがたいです。」
- 店舗展開は?
「自分は人に任すことができないので、店舗展開は全く考えていないです。何でも自分でやりたいんです。」
- 袴田店主が拘っていることは?
「しっかり豚骨を炊いて、カエシなども全て自分で作っているんですけど、どれかが美味しいというよりは全体的に美味しいと思ってもらえるように取り組んでいます。湯切り一つでも、強く切ったらいいわけでもないし、ゆるく切ってもいいわけでない。平ザルじゃなくてテボでも上手くできるか試したことがありますが、やっぱり平ザルの方が美味しく湯切りができると確認できました。
味に関してでも、浜松では豚骨臭いというのは嫌われるので、豚骨臭を抑えながらでも、啜って息を鼻から吐く時にそのポイントに味が残るようにできないかとか考えて作っています。今尚、もっと美味しくできるように、そういう作業を繰り返しています。」
- 最後に一番大事にしていることを教えてください。
「家族に食べてもらえるラーメンです。自分の大切にしている人の食べ物には自然に気を使います。それを考えていれば安心安全で美味しいものができると考えています。材料、調味料など少しでも良いものをと考えています。化学調味料など極力使わず、ほうれん草も地元の物を朝茹でて使っています。」
◆店舗情報
蔵前家
静岡県浜松市北区細江町中川7172-2522
公式HP:http://kuramaeya.jp/
Twitter:https://twitter.com/kuramaeya2001
2009年4月4日:浜松へ移転オープン
2001年:東京浅草で創業
(取材・文・写真 KRK 令和4年10月30日)