Vol.270:二代目 ガチ麺道場


 今回取材するのは愛知県豊川市の人気店「二代目 ガチ麺道場」。日本のラーメン史上、ミシュラン一つ星を獲得したラーメン店はまだ4店だけ(2022年10月現在)。その中の1つが伝説のガチ麺道場(当サイト記事)で、正当の後継店として上野店主の息子さんが引き継ぐ形で誕生したのが、今回取材する「二代目 ガチ麺道場」だ。

 あまりにも大き過ぎる父の存在、日本ラーメン史上に残る重要店を引き継ぐことになった息子さんの気持ちはどうなんだろう。いろいろ聞いてみようと思う。「二代目 ガチ麺道場」上野店主にKRK直撃インタビュー!


- ご出身は?

「愛知県豊川市です。」

 

- 家族が飲食店をしているのを見て、自分も将来は飲食をしたいと思っていたんですか?

「小さい頃からお爺ちゃんもお父さんも飲食店をしているのを見て育って、僕は凄く嫌だったんですよ。それで高校を卒業後、岡崎の某社に野球の推薦で入社したんですが、その会社に馴染めなくて3ヶ月目には辞めることを考えていました。」

 

- 何か他にしたいことがあったんですか?

「やりたいことも特にありませんでした。当時、父が豊川市で居酒屋をすると知ったので、飲食をやりたいわけじゃないけど、会社を辞める理由が欲しくて父のお店へ入らせてもらうことになりました。」


- その後、ラーメンをするまでの経緯は?

「父がガチ麺道場のセカンドブランド店『侍SAMURAI麺Noodle』を豊川市でオープンして、僕がそのお店の店長を任せてもらったのがラーメンに携わった最初のきっかけです。当時、僕は同市内で焼き鳥屋もやっていて、焼き鳥屋だけでは集客もあまり伸びなかったので、お昼の時間でラーメンをやりたいと父に頼みました。それから僕の焼き鳥屋のお昼の部に『侍SAMURAI麺Noodle』を移転することになりました。」

 

- 初めてラーメンをしてどうでしたか?

「僕は居酒屋あがりだったので、最初に思ったのは『ラーメンは単価が安いので大変だな』ということでしたね。それから父に製麺を教えてもらって毎日している内に、自分でも日々の変化が分かってくるようになってきて面白くなってきました。どんどん真剣に取り込むようになってきたんですが、その時にコロナ禍になっていったんです。夜の居酒屋はもう全く駄目になったんですが、昼のラーメン営業は売り上げが上がってきたんです。その時に『もうラーメン一本でしたい』と父に相談しました。」


2020年12月12日オープン


- 自分の父がミシュラン一つ星に選ばれたというのは、家族目線ではどんな感じだったんですか?

「凄いとしか言いようがなかったですね。毎朝、家の前がお客さんの並びで大騒ぎになって、こんな凄いことなんだと驚いていました。」

 

- その屋号を「二代目 ガチ麺道場」として引き継ぐことに迷いはありましたか?

「プレッシャーは凄かったですね。最初、父も『無理してこの屋号でしなくていいんだぞ』と言っていましたが、僕はこの屋号でやりたいと思っていました。自分に中途半端なことをできないぞとプレッシャーをかける意味も込めてやりたいという気持ちでした。」

 

- ガチ麺道場を引き継ぐ時に、お父さんから何か言われたことは?

「『お前、もう分かっているだろ?』と言われました(笑)。父の仕事をずっと見てきていますからね。失敗しても一生懸命した失敗は昔から父は怒らないんですが、いい加減なことをしての失敗はメチャクチャ怒るんです。」

 

- 二代目としてガチ麺道場を始めて、お客さまの反応はどうでしたか?

「ネットで色んなことを書かれてしまって(笑)、最初は大変でしたね。でも、ある程度自分の中で予想していたことなので、それから少しずつ進歩してきたと思っています。最近は雑誌などでも高評価してもらえるようになってきました。」

 

- 厳しい父の元でラーメン屋をしていくことで、もう投げ出したいとかの挫折は?

「今まで父と関わって何かをやるのは居酒屋の時も含めて5〜6回くらいあります。何回も揉めて、離れてを繰り返していました。もう僕もいい歳になっているので、今回はもう絶対にあきらめない。何を言われてもいいと思って取り組んできました。」



- 現在の二代目ガチ麺道場は、ほぼ自分でされているんですか?

「半年くらい前までは何をするにも父に食べてもらい許可をもらってからという感じでしたが、今はもう『好きにやれ!』と言われるようになりました。」

 

- それは自信になりますね。

「小さい時から父を見ていてあまり誉めたりしないのは知っているので、そういう一言で『ちょっと認められたかな?』と嬉しかったです。」

 

- 上野店主が一番拘っていることは?

「拘っているのはダントツで麺です。気温変化によって加水のパーセントを変えたり、加水する水の温度を気温に合わせたり、毎日拘ってしています。最初、父に教えてもらった時は、『そんな作業が必要なのかな?』と思うことが多かったんですが、自分で打っていく内に『昨日と同じように打ったのになんか違うな?』とか思うようになって、それから考えて取り組むようになりました。」

 

- 気持ちの面で大事にしていることは?

「当たり前のことですが、丁寧な仕事です。」



◆店舗情報

二代目 ガチ麺道場

愛知県豊川市諏訪1-14

twitter:https://twitter.com/2daimegachi

instagram:https://www.instagram.com/2daimegachi/

オープン日:2020年12月12日

 (取材・文・写真 KRK 令和4年10月28日)