Vol.263:中華蕎麦 ひら井


 2年ぶりの東京。今回取材するのは「中華蕎麦 ひら井」。東京の濃厚系を背負う次世代トップランナーとして注目されているお店だ。調べてみると、店主の開業するまでのストーリーもかなり濃い内容みたいなので、取材する日がとても楽しみだった。「中華蕎麦 ひら井」上野店主にKRK直撃インタビュー!


- ご出身は?

「東京の八王子です。」

 

- ラーメンをするきっかけは?

「ずっとラーメンが好きだったので、大学に入ってからラーメン二郎の八王子野猿街道店さんと新小金井街道店さんでアルバイトとして働き始めました。アルバイトをしている内に将来ラーメン屋をやりたいと考え始めました。」

 

- ラーメン屋に興味を持ってからは?

「ラーメン屋になるにはどうしたらいいか考えました。ラーメン屋さんに就職することも考えたんですけど、製麺機の大和製作所さん(公式HP)が募集していたので、そこに営業として入りました。」

 

- 理由は?

「麺の勉強をしたかったんです。大和製作所さんはラーメン学校も経営していますから、そういう勉強ができると思いました。本社は香川県で、自分は名古屋の営業所へ配属されました。製麺機の営業とかメンテナンスとか、麺の作り方を教えたりとか、そういう仕事をしていましたね。」

 

- 営業していたエリアは東海中心ですか?

「営業所があまり無かったので、東海と北陸、静岡の浜松まで営業エリアがありました。北海道とかも営業で行っていましたね(笑)。営業で多くのラーメン屋さんと知り合えるので、そこで独立へ向けて色々教えてもらったりしました。」

 

- 仕事を通して、色んなラーメン屋と交流も生まれたんですね。

 「僕が名古屋に行った当時はまだそんなに麺に拘っているお店って少なかったんですけど、どんどん名古屋の麺のレベルが上がっていくのを現地で実感していました。当時から仲良くさせてもらっていたのは、弓長店主(中華蕎麦 生る)、服部店主(麺家 半蔵)、高松店主(麺者すぐれ)。休みの日に一緒にサッカーをしていたくらいでした(笑)。」

 

- 大和製作所で働いている内に、自分がしたいラーメンが浮かんできた?

「やっぱり麺について一番勉強していたので、麺で勝負できる商品と考えるとつけ麺。一番自信があるのが麺でしたから、つけ麺を主力にしてお店をすると決めて、そこからスープとかを考えていきました。」

 

- 独立へのきっかけは?

「最初から30歳になったら自分で始めると決めていました。29歳になると大和製作所さんを退職して東京へ戻ってきて、ラーメン二郎さんや他のラーメン屋さんでも掛け持ちで働きながら、物件を探していました。」


2021年5月10日オープン


- 場所は決めていたんですか?

「東京の多摩地区で探していました。」

 

- 屋号の由来は?

「自分の名前は上野なんですけど、僕が平井堅さん(歌手)に似ているからなんです。」

 

- そこから「ひら井」? 本当なんですか(笑)?

「はい(笑)。そこから取りました。中華蕎麦というのは『漢字だけだとかっこいいな!』と思ったし、名古屋の大好きなお店、中華蕎麦 生るさんへのリスペクトとして『中華蕎麦 ひら井』と決めました。」

 

- 自店のメインとして決めた商品は?

「自分の好きな濃厚系でしようと決めていました。味で影響を受けたのは、金沢に行った時に食べた金澤濃厚中華そば 神仙さん。あの味に影響を受けて、神仙さんのお店が東京にもあったのでそこでも少し働かせてもらいました。麺で言えば、中華蕎麦 とみ田さん、中華蕎麦うゑずさん、麺屋一燈さんが好きでしたね。」


チャーシューつけ蕎麦


- オープン時の商品は?

「濃厚のつけ麺と、ちょっとあっさりにした中華蕎麦。一番出汁、二番出汁、三番出汁でとっていて、つけ蕎麦が三番出汁で、中華蕎麦は一番出汁を三番出汁でちょっと割っているという感じですね。」

 

- 拘りの麺について、少し紹介して下さい。

「国産の小麦粉を3種類合わせているんですけど、もっちりしていながらコシがある。味が強くて、麺だけ食べても美味しく食べられるほど。塩も付け合わせで付けているんですが、塩だけでも食べられるような麺を目指しています。生卵をいっぱい入れているので、見た目は太麺で硬そうなんですけど、食べるとしなやかで弾力ある麺になっています。」

 

- 鶏豚牛の動物系100%スープも話題になっていますよね。

「関東のつけ麺の有名店は魚介を使っている店が多いじゃないですか?自分も同じように魚介つけ麺をするのが嫌だったんです。大和製作所で大和のラーメン学校の研修に参加した時に、牛骨を使って作ったラーメンが美味しかったんです。魚介を一切使わずに、鶏と豚と牛で濃厚な美味しいスープを作れたら面白いし、話題にもなるだろうなと思っていました。家で試作も繰り返して準備していました。

 塩の濃厚つけ麺って他に無いので、最初は牛を強めて塩味でしようと試作していたんです。しかし、試作している内に段々と豚が強くなってきて、そうすると塩が合わなくなってきたんです。それで醤油の味に変えることにしたんです。」

 

- チャーシューも評判いいですよね。

「当初から、大事なのは肉と麺とスープだなと自分の中でありました。メインは焼豚。炭火で焼くだけだと香ばしさは出るんですけど硬くなってしまうので、焼いた後に醤油ダレで煮ているんです。毎日、当日分を2時間焼いて、2時間煮て、めちゃくちゃ時間かけて作っていますので、チャーシューには自信があります。」

 

- 全てに拘り満載なんですね!

「自分の中で順番をつけると、麺、チャーシュー、スープですね。」



- オープンしてお客様の反応は?

「反応は良かったですね。もうちょっと中華蕎麦が出るかと思ったんですが、つけ蕎麦ばかりだったので意外でしたね。最初は中華蕎麦の方が自信があったんですが(笑)。注文はつけ蕎麦が8割くらいですね。」

 

- 上野店主が大事にしていることは?

「自分が本当に美味しいと思うものを出すこと。他のお店の真似をしないで、オンリーワンで圧倒的なものを作ることを意識しています。美味しいと言われるよりも、凄いと言われる方が嬉しいんです。『凄いつけ麺!』とか、そういうのを目指しています。」



◆店舗情報

中華蕎麦 ひら井

東京都府中市栄町2-11-7

twitter:https://twitter.com/tyukasoba_hirai

instagram:https://www.instagram.com/tyukasoba_hirai/

オープン日:2021年5月10日

 (取材・文・写真 KRK 令和4年7月17日)