Vol.242:麺家 あくた川


 今回取材するのは凄まじい勢いで人気急上昇中の「麺家あくた川」。多くの熱狂的なファンに支持されて、京都を中心に兵庫、福岡、そして海外!その勢いは天井知らずなお店だが、そんな人気店を牽引している方はどんな方なんだろう?話してみたくなって取材の時間を作って頂いた。「麺家 あくた川」芥川代表(株式会社 ARK HERO'S)にKRK直撃インタビュー!


- ご出身は?

「大分県の中津市です。」

 

- ラーメンは好きだったんですか?

「ラーメンを食べるのが大好きでしたが、ラーメン屋になりたいとは当時は全く思っていなかったですね。」

 

- 飲食業に入るまでの流れを教えて下さい。

「高校卒業後にデザインの専門学校へ行き、そこから就職したのが東京の凸版印刷の下請け会社でした。そこから静岡へ振り分けられて働いていましたが、3ヶ月ほどで辞めました。それからはアパレルや工場勤務などをしていたんですがどれも続かなかったんですよね。」

 

- どの仕事も続かなかった理由は?

「当時はとにかくやりたいことが無かったんですよ。もっと言うと飲食店は絶対無理だと当時は思っていました(笑)。以前に某チェーン店でアルバイトしていた時にお皿洗いとかして『飲食は自分には無理だな~』と思っていたんです。」


- ラーメンを作る側になるきっかけは?

「当時働いていた工場が怪我をしたり死亡事故があるような危ない職場だったのでウチの兄が心配してくれていて、それで千葉でラーメン屋をしている兄の友達を紹介してくれたんです。」

 

- 「絶対無理」と思っていた飲食店ですよね。

「聞いた時は『ラーメン屋か〜。せめて居酒屋がいいな〜。』と思いましたね(笑)。いざ働き始めるとラーメンの世界って想像以上に厳しくて、そして社長が相当厳しい人だったんです。その社長が雲の上の人って感じの衝撃的な個性を持っている人で『お前らはそこへ行くのか!行かないのか?自分で決めろ!』とか言う人でした。それで僕はノートとペンを持って『教えてください!』とやっていました。そのお陰で多くのことを学べたんですけど、しんどくて辞めようと何度も思いました。でもここで負けたらダメだなと思っていました。」

 

- 働いている内に気持ちの変化も?

「オープニングスタッフで入った時に同期が3人いたんです。他の3人はイタリアン出身や調理師免許を持っている人で、僕だけがど素人だったんです。最初はもうコテンパンでしたね。それで自分ができることは何かなと考えて『声だけは出せるな!』と思い、ずっと声が枯れるまで出していたんです。すると周りの人間の(僕への)見方が変わってきて、お客さんからも『このお兄ちゃんがいるからこの店へ来てる』と言ってもらえたりして、その頃に『飲食って面白いな〜』と思い始めました。」

 

- 当時から独立志望はありましたか?

「当初は全然考えていなかったんですが、そのラーメン屋に入って2年目の頃にアルバイトだけで集まって会議をしたことがあったんです。皆であ〜でもない、こ〜でもないって話し合った空間がとても楽しかったんです。その時にこういう楽しい空間を作れる会社を自分で作りたいと考え始めました。」

 

- 独立を考え始めてからは?

「独立したいと考え始めたんですが1店舗だけでは経験も知識も足りないと思い、それから居酒屋さんや他のラーメン屋さん、和食屋さん、いろんなジャンルの店で多くのことを学ばせて頂きました。」

 

- いろんな店で働いて気持ちはブレませんでしたか?

「更に『ラーメン屋って素晴らしい職業だな!』と思いました。それから東京の大井町にある武蔵家さんで修行をさせて頂くことになりました。」

 

- 修行先に武蔵家を選んだ理由は?

「自分が美味しいと思えるラーメンで、水からしっかり炊いているラーメン屋さんで勉強させてもらいたいと考えていました。それで当時住んでいた地域で探して武蔵家さんを選びました。入る時から独立志望は伝えていました。大井町から新中野の本店、他の系列店などで多くの経験を積ませて頂いてから独立する決心をしました。」


- 京都を選んだ理由は?

「武蔵家さんが店舗展開していた場所が学生の多い地域が多かったんですよ。それで『学生の多い所はどこなんだろう?』と考えた時に京都が多いと聞いたんです。それまでは東京でずっと探していたんですけど、京都も一回見てみようかと思って来てみると『京都、面白いじゃん!』となって京都ですることに決めました。」

 

- 最初にオープンしたのは?

「初代は同志社大学の近くです。それから立命館、関西学院。大学の近くでないのはオープンしたばかりの燻とん(2021年12月オープン)だけですね。燻とんのコンセプトが『世界に通用する豚骨ラーメン』なので、世界に出すためにはいろんな人たちが見かける立地に出す必要がありました。」

 

- 凄い勢いで店舗展開されていますね。

「今は国内7店舗、海外に1店舗です。当初は店舗展開は全く考えていなかったんです。一番最初に会社を作った時に僕が厳し過ぎて人が逃げていったりとかあったんです。それでも少しずつですが仲間が増えてきて、仲間が増えてくると彼らが活躍できる箱が必要になるんです。それで店舗展開が必要だと思い始めました。」

 

- 芥川さんが作りたかったお店とは?

「元々僕にとってもラーメン屋さんって労働条件が悪い、強面の人がいる、とか悪い印象が強かったんです。大学まで出た子供にラーメン屋で働かせたくないと思っている親も未だに多いと思うんです。僕はそのイメージが悔しかったんですよね。ラーメン界全体を変えることはできないかもしれないけど、あくた川(株式会社 ARK HERO'S)だけは『ラーメン屋だけどあそこなら働きたい』と思ってもらえるような会社、従業員が自慢できるような会社にしたいと思っています。」


- 自店の商品は修行時代から決めていたんですか?

「自分が東京に出てきた時に家系を初めて食べて『美味しいな〜!』と感動したので、家系でやりたいと決めていました。」

 

- お店の商品については?

「ラーメンだけは誰にも負けたくないと思って、これまで色々勉強して失敗もして今があります。これだけ技術が進化したらラーメンって簡単にできるモノになりつつありますが、でも僕らがしっかり水から炊いてラーメンをきっちり作り続けることでラーメン作りへの想いをお客さんへ伝え続けられると思っています。時代が進むにあたって簡単に何でも作れてしまうようになってきているし、対面で料理の良さを見れない時代になってきました。僕らはもちろん感染症対策をしっかりした上で、対面で美味しいラーメンを作る過程をライブで楽しんでもらいたいと思っています。」



- 芥川流の人材育成とは?

「僕は言いたいことを遠慮なく言いますが、スタッフとの関係性をしっかり持って育てています。キャンプで食べるカレーと同じで、飲食店は美味しいものを提供するだけでなく"環境を提供する"と思っています。環境とは何かと言うと、清潔さとかラーメンのクオリティだけでなく、スタッフの人柄。ウチは社員旅行、年末年始の休みをバン!と取るし、社員研修にも力を入れています。」

 

- 芥川代表の大事にしていることは?

「ヒトです。飲食の原点はヒトにあると思いますし、全ての仕事ってヒト次第だと思います。人柄が入るからその商品が生きるし、もっと成長していける。何を売るかよりは、"誰と何を売るか"が大事と思いながら毎日やっています。そのために人と人の距離感、お客さんとも仲間とも、これから出会うだろう仲間とも距離感が大事だと思います。何をやっても素晴らしい人材がいればその商品が輝くし、店も輝くし、来てくれているお客さんも輝く。そのために人財教育にしっかり力を入れて取り組んでいます。ただシステムで雇うだけでなくて一緒に夢を共有できる仲間が欲しいと思っています。」

 

- その考え方は自己流なんですか?

「元々、僕はヒトが好きなんですよ。中津の港町生まれで『家族じゃない人も仲間じゃないか!』という環境で育ったからだと思います。」

 

- 今日はありがとうございました。今後の活躍を楽しみにしています。

「ヒトって1人じゃ何もできないんですよね。ウチは僕の意志で大きくしているというよりは、皆んなの意志で大きくなってきていると思っています。ありがとうございました。」


◆店舗情報

総代 麺家あくた川

京都府京都市左京区田中門前町73

twitter:https://twitter.com/sodai_akutagawa

芥川代表ブログ:https://ameblo.jp/ag2580keigen/

 (取材・文・写真 KRK 令和4年1月13日)