Vol.241:とことんとりコトコト


 2021年1月、東寺の近くに個性的な新店が現れた。屋号は「とことんとりコトコト」。一度食べたら忘れられないインパクトあるドロ系ラーメンで瞬く間に話題のお店となったお店だ。突然現れた謎の多いお店なのでいろいろ聞いてみたいことがあるので、昼営業終わってから取材する時間を作っていただいた。「とことんとりコトコト」中谷店主にKRK直撃インタビュー!


- ご出身は?

「生まれは東京なんですが、物心ついた時からずっと京都にいました。」

 

- 飲食をするきっかけは?

「元々ラーメンが好きというのもあったんですけど、飲食でもラーメン屋さんって作るものが少ないので入りやすいかなと思って大手の某ラーメン店に入社しました。そのお店は関西では出店を出し尽くしていて、『もしお店を任せるとしたら地方になります』と聞いていましたが、その時は地方でも構わないと思っていました。しかし父親の具合が芳しくなくなってきて近くにいてあげたいと思ったので、そのお店を辞めさせてもらいました。」

 

- 大手ラーメン店を退職してからは?

「それからしばらくはサラリーマン的なことをしていて自分に合った仕事で調子は良かったんですが、なかなかそれが給料に結びつかなかったんです。それでやっぱりラーメン屋がいいなと思い始めました。」

 

- ラーメンに再び戻るんですね。

「大手に入って同じようになると困るので、次は個人でしている小規模なお店で働きたいと思い某店で働き始めました。大手さんではレシピを渡されてその通りに作っていただけなんですけど、そのお店で多くのことを任せてもらえるようになって『ラーメン屋って面白いな!』と思い始めました。でもそのお店は閉店してしまったんです。閉店の数ヶ月前からお店の方向性が段々変わってきて、僕は閉店前に辞めさせてもらっていました。」


- その時に独立を考えましたか?

「自分でするにはまだまだ準備ができていないと思い、他のお店で働かせてもらっていました。次に入ったお店では今までの経験からすぐに店長を任せてもらいました。面接時に独立志望も伝えていましたが、オーナーさんが『ウチのレギュラー商品をきっちり出してくれていたら、限定とかは好きなようにしていいよ!』と言ってくれました。その時に色んなことを試せて、仕入れとかもさせてもらっていたので本当に良い経験となりました。」

 

- その時に自分のお店で提供する商品作りができたんですね。

「はい。過去を振り返ってみて自分のお店で出すならどんなラーメンがいいかなと考えました。美味しいラーメンは色々ありますが、ドカーンとクセになるような、今日食べたけど明日も食べたいってラーメン。そう考えたら天下一品さんが思い浮かびました。お好み焼きとかパスタとかは自分で作って食べていましたが、天下一品さんのスープは自分では作れない。外食と言ったら天下一品さんに行こうという感じでしたし、僕の周りにも天下一品さんのファンが多かったんです。だから目指すところはそこだなと思っていました。」

 

- 具体的には?

「最低ラインとしては麺がスープに絡むほどの濃度は絶対欲しいと考えていました。猛烈にまた行きたいと思うようなこってりした商品、そして濃厚が苦手な人が一緒に来ても食べてもらえるラーメンと考えて、鶏がメインなんですけど野菜も大量に入れて作りました。そして色んな人に食べてもらって反応を見て、これならやっていけるなと思って今のラーメンに行き着いた感じです。」


- 独立するきっかけは?

「独立のきっかけはコロナだったんですよ。働かせてもらっていたお店がコロナ禍でしばらく休業することになったんです。材料とか残っていたので、休んでいる間、家賃は僕が負担するのでこの店を貸してもらえませんかとお願いしました。」

 

- 間借り営業という形ですね?

「はい。そのまま"間借り屋"という屋号で4ヶ月間ほど営業をさせて頂きました。商品は今ほど濃度は上げていなかったですね。宣伝とかしていなかったので最初はお客様も少なかったので、お客様にいろいろ意見を聞かせてもらったりしながら手応えを掴んでいったという感じです。」

 

- この力強いスープに合わせる麺は悩みましたか?

「前から棣鄂さん(麺屋棣鄂)の噂をよく聞いていたので、間借り営業を始めた時に棣鄂さんに『こういう麺が欲しい!』と伝えたんです。そして提案してもらった麺で試作したら圧倒的に僕の思い描いていた麺だったんです。この麺を使いたいとすぐに決めました。僕の修行店が自家製麺をしていたので、僕は自家製麺の大変さ、同じ麺を作り続ける大変さが分かっているんです。棣鄂さんの麺は棣鄂さんしか作れないんですよ。」


◆2021年1月28日オープン


- そして現在の場所で独立開業ですね。

「コロナ禍で物件は色々と空いていましたがなかなか良い物件に出会いませんでした。この物件は最初は先客がいて断られたんですが、後から空きになったと連絡があってこの物件に決めました。」

 

- 屋号の由来は?

「料理は僕なんですけど、屋号やエプロン、お店の飾りとかは全て妻に任せています。屋号は僕も漢字二文字のかっこいい"濃厚"とか付けたのを考えていたんですけど、妻から却下されました(笑)。妻が平仮名が流行っていると言ったので二人で色々書き出して、『他に無い屋号がいい』ということでこの屋号に決めました。」



- オープンしてどうでしたか?

「実は間借り営業時代に面白いということでテレビ朝日の某番組で取り上げて頂いたんです。それで間借り営業の最後の方はお客様がとても多くなっていて、この店のオープン時もとても多くのお客様に御来店して頂きました。」

 

- 順調なスタートだったんですね。

「多くのお客様に来ていただいて有り難かったんですけど、良いことばかりではなかったんです。僕は飲食の経験があるんですけど、妻はあまり経験が無かったので一気にお客様が来た時に対応できなくてSNSで接客について色々書かれていたんです。それで妻はだいぶ傷ついてしまったんです。」

 

- どう乗り越えたんですか?

「妻は食後にお茶を出したり、出口に鶏の人形を置いたりを始めました。妻は百貨店出身なので接客の質が僕と全然違うんです。僕はずっとラーメン屋をしてきたのでいかに商品を早く出すかなんですが、妻はお客様にいかに気持ちよく帰って頂くかということを大事にしているんです。僕が料理に集中している間、妻は他の面でしっかりお店のことを支えてくれています。」

 

- 中谷店主が大事にしていることは?

「味はもちろんなんですけど、皆さんに愛されるお店にしたいと思っています。特定のお客様だけじゃなく、お子様連れの方達にも楽しんでもらえるお店になりたいと思っています。」



◆店舗情報

とことんとりコトコト

京都府京都市南区西九条比永城町26-2

twitter:https://twitter.com/@HUCHQ7hnLtmg0fu

instagram:https://www.instagram.com/ramen.tokoton_tori_cotocoto

オープン日:2021年1月28日

 (取材・文・写真 KRK 令和3年12月17日)