Vol.187:一望

2020年10月5日 移転オープン!


◆店舗情報

・屋号:一望 ICHIBOU

・住所:奈良県奈良市法蓮町1249-1

・Twitter:https://twitter.com/ramen_ichibou

・移転オープン日:2020年10月5日

(注)スタッフが揃うまで当面は昼営業のみ(SNS要確認)


◆メニュー情報

・豚骨 極純ラーメン ¥800

・豚骨 超濃厚ラーメン ¥870

・豚骨 魚介ラーメン ¥780



 奈良の人気店「一望」がいよいよ10月5日に移転オープンする。場所は近鉄奈良駅から徒歩圏内。近年、新店オープンラッシュで「奈良ラーメン最激戦区」と呼ばれ始めているエリアだ。そしてこのタイミングで直近のラーメンでの関西豚骨GP受賞。注目度が増すばかりの人気店にオープン前に取材する時間を作っていただいた。移転の理由、ラーメンをするきっかけ、などいろいろ聞いてみようと思う。「一望」鈴木店主にKRK直撃インタビュー!


◆鈴木店主インタビュー

- 出身は?

「名古屋です。」

 

- ラーメンをするまでの流れは?

「23歳頃まではアングラ(アンダーグラウンド)で演劇をしていました。自分たちで小屋を作ってお客さんを集めて公演を打つってのをプロ目指してしていましたが、あるきっかけがあって演劇を離れることになり、それからベンチャー企業に入社しました。元々は経営の方に興味があったので、経営者への道って感じでしたね。その会社がフランチャイズ展開をしている中で『むつみ屋』(ラーメン屋)があって、チェーン店のイオン内での展開を任されることになりました。愛知、大阪、奈良、静岡としていましたが、それをやっている途中にむつみ屋が経営破綻してしまったんです。それで自分も一回人生を見つめ直してみようと思って、一回ラーメンから離れようと思って退社をしました。」

 

- 何をしたいか考えたんですね。

「いろいろ考えたんですが、やっぱり結局ラーメンがしたくなりました。ラーメンの味というよりもラーメンの仕事、ライブ感とかに魅了されていました。物販とかもやったんですけど誰かが作ったものを売るよりも、自分がそこでラーメンを完成させて目の前で食べてもらってと最後まで責任が取れる、全部完結できるってのが好きでした。」

 

- 再びラーメンをしたくなって?

「当時、僕の中で日本で頂点と思っていたのが一風堂。経営面、日本でシステムとかが一番優れていると思っていました。それで一風堂の京都錦店に入社しました。」

 

- 京都店なら久保田さん(吟醸らーめん久保田)、三田さん(麺屋さん田)との接点とかは?

「久保田さんは僕が入った頃には独立して既にお店を出していた頃です。さん田さんが一風堂にいたというのは最近知りました。僕は一風堂には短い期間しかいませんでしたから。」

 

- 短い期間になった理由は?

「一風堂で働いている時に木津川市でラーメン屋を辞める方がいらっしゃって、そのお店を売却してもらう話が入ったんです。」

 

- 自分でしたいとは以前から思っていたんですか?

「その話が来るまではそれほど考えていなかったんですが、急にお店をやりたいという気持ちが出てきました。それで一風堂を退社したんですが、その物件の話が結局まとまらなくて宙ぶらりんになってしまいました。でももう自分でラーメン屋をやりたい気持ちしかなかったですね。」


◆濃とんこつラーメン一望 ICHIBOU

(2014年3月9日オープン)


- 自分のお店で出すラーメンは既に決めていたんですか?

「豚骨でするということだけは決めていました。名古屋で食べ歩いていた時、一番軒の豚骨が好きでした。今は多店舗展開していますけど、当時は守山で一店舗でしていた頃。博多系で低加水の細麺。あれが好きでしたね~。あとは無鉄砲さん。無鉄砲で食べた時に『こんな豚骨もいいな~』って感動しました。」

 

- あの東生駒(奈良県生駒市)の物件に決めた理由は?

最初家の近くで探し始めてデータもいろいろ取ったんですよ。人口比率に対する店舗数とか商圏的なものですね。それで東生駒の物件に出会いました。ちょうど子供が生まれてすぐだった頃だったのでラーメン屋に連れていけなかったんです。そういう敷居が高くてルールが厳しい個人店というよりは、個人店の拘りがありつつもベビーカーや車椅子とかでも気軽に来れるお店にしたくて、充分な広さがあるあの物件に決めました。大学も近くにありましたからね。」

 

- 屋号「濃とんこつラーメン一望 ICHIBOU」の由来は?

「豚骨というのを決めていたのと、濃い豚骨。無鉄砲系のような濃厚系、一番軒のような博多系、熊本ラーメンっぽいラーメン、そういうのを合わせた自分オリジナルの商品でやりたい。ちょっと人と違う豚骨をやりたいって思っていましたので『濃とんこつラーメン』と付けました。

 『一望』は絶景を一望するという意味。絶景を見ると心に残るじゃないですか?そんなラーメンを出したいという意味です。ラーメンを通じて何かを刻めたらいいなって。」

 

- 英語表示「ICHIBOU」も付けたのは?

「一望って漢字だけだと和風でお蕎麦屋さんみたいな感じになってしまうかなと思いました。自分が作るラーメンは王道という感じじゃないので、和風のイメージを付けたくないと思い英語表記も加えました。」

 

- 2014年にオープン時の商品は?

「無化調の純豚骨で、麺は全粒粉の低加水。ちょうど全粒粉のつけ麺とかが流行りだした頃でした。豚骨の黒と白、その二本だけでした。」

 

- オープンしてどうでしたか?

「お客様は凄いいっぱい来てくださいましたが、オープンするまでに試作するのとオープンしてからお客様に作るのは全く違いました。今までチェーン店で働いていたので、全く初めてのことだったので大変でした。それが一番最初の挫折でしたね(苦笑)。オペレーションもチェーン店の時のオペレーションでしていたので今のように一杯一杯を丁寧に作ろうとするよりも、作業効率を上げるためにまとめて作るってやり方。ばらつきがかなりありましたし、出来栄えも酷い時もありましたね。」


- 6年半ほど経って、今回移転することに決めた理由は?

「手が悪くなって手術してから移転をなんとなく考え始めましたね。そして『みつ葉さん』の影響がやっぱり大きかったですね。お客さんを大事にするスタイル。僕も大事にしていましたけど距離感が違ったんですよ。お客さんとの触れ合い、関係性を作っていくことの差。以前のお店では客席と厨房が離れていたのでそういうのができなかったんです。元々、原点に戻ると、ラーメンを通じて感動してもらいたいというのは味で感動してもらうだけじゃないんです。そこに戻りたいと思い、移転先を3年くらい探していました。」

 

- 3年ですか!かなり長い間探していたんですね。

ただ移転するだけじゃなくて、移転するまでには本当に自分が出したいものを完成させたいと思っていました。東生駒の時は大箱店だったので幅広いメニュー、サイドメニューを揃える必要がありましたが、移転をきっかけに自分が本当に提供したいものだけを厳選して、作り方も見直していきました。それができてから移転したいと考えていたので、それで3年かかりました。」


◆一望(2020年10月5日 移転オープン)


- 屋号を「一望」だけに変更したのは?

「メニューを本当に出したいものに厳選したのと同様、余分なものを削ぎ取るという意味で『一望』だけにしました。」

 

- 新店舗での商品は?

「メインは豚骨3種類、豚骨 極純ラーメン、豚骨 超濃厚ラーメン、豚骨 魚介ラーメンです。まぜそばもやりたいとは思っていますし、夜限定でつけ麺も考えていますがまだ未定です。お店の売りは豚骨です。」

 

- 手を怪我した時に豚骨をやめようとは思わなかったんですか?

「何かを言い訳にしたくなかったんです。それだったらラーメン屋をやめた方がいいと思いました。何かを理由に作っていたらチェーン店の時と変わらない。豚骨をやりたいから自分のお店をしています。それだけです。僕は白湯しか考えていないです。」

 

- 鈴木店主が大事にしていることは?

「自分に嘘をつかない。自分のしたいことをする。自分に正直にごまかさないです。」



 (取材・文・写真 KRK 令和2年9月24日)