Vol.159:井澤製粉株式会社


 今回取材するのは京都市南区にある井澤製粉株式会社。1930年5月に設立されてから多くの飲食店のサポートをしてきた京都府下で唯一の製粉メーカーだ。京都府内の多くの人気店が参加して盛り上がっているイベント"京小麦の収穫祭"(公式instagram)を通して、この会社の名前を知るようになったラーメンファンも多いだろう。

 取引しているお店はラーメン、パン、お好み焼き、イタリアン、洋菓子、うどん、など多岐にわたっている会社だが、今回の取材の軸は「井澤製粉とラーメンの関係」。製粉メーカーの取材は初めてだが、工場見学という気分でワクワクしている。


●会社情報

・井澤製粉株式会社

・設立:1930年5月2日

・住所:京都府京都市南区久世中久町736



代表取締役 井澤雅之様インタビュー

- 井澤製粉の会社設立は1930年、ということはもう90周年になるんですね。

「会社そのものとしては昭和5年にスタートしていて今期でちょうど創業90年になります。製粉を始めたのは戦後ですが、元々の前身となっている会社は食品館という名前で、広く食品を扱う会社だったそうです。昭和5年のことなので私も聞いたことしかないんですが(笑)。」

 

- 戦後になって製粉を始めたきっかけは?

「戦後、食料難の時代がありましたので、国の方から『製粉を一回やってみないか?』という話がありました。当時、復興のためにアメリカから小麦を国がだいぶ預かっていたので、原料だけあるので挽いてみないかという話だったそうです。」

 

- 当時、取引していたのは?

「それこそ戦前の話で今のような物流も冷凍や冷蔵技術も無かった時代ですし、恐らくですけどそんなに長距離輸送もできなかったはずなので、地域の地元の皆様にお買い求めていただいていたと思います。」

 

- 現在、京都府下で唯一の製粉会社ということですが、理由は?

「以前は京都府下にも何十社か分かりませんが、それなりの数の製粉会社がありました。年々少なくなってきまして、現在、京都府下の小麦の製粉メーカーは私共一社だけです。全国的に製粉会社が減少しているんです。複数の製粉会社が統合したり、関連食糧品(二次加工食品)の製造会社に転身するとか、いろんな理由があります。

 もう1つの理由は人口が減ってきているし、少子化で一番食べ盛りの子供の数が少ないので小麦粉の消費量が減っていることです。ラーメン屋さんとかはヒット商品を出したら売り上げが上がりますが、小麦の製粉は爆発的に売れるような業界ではありません。」

 

- 現在、どういったジャンルのお店と取引をされているんですか?

「小麦は色んな用途にお使い頂ける、すそ野の広い食品素材なので、パン、中華麺、うどん、お好み焼き、揚げ物をする時の衣の部分、ホットケーキ、洋菓子、和菓子、いろんな業界に使ってもらっています。昭和40年~50年代は圧倒的にうどんが多かったんですが、現在は製造する時の挽砕比率(実際に挽いている比率)でみると強力粉が多いです。強力系の小麦というのは、パン、中華麺に適する麦種です。これの比率がとても多くなってきていますね。京都で製粉会社はウチ1つなので、学校給食用のパンを作るための小麦粉もウチが挽いています。」


●KRK動画:井澤製粉 営業担当 山本様インタビュー


●工場ご案内


●当日の写真


●ラーメン界からの声

木下店主(らーめん専門 和海)

「約5年前、自家製麺に変えてから試行錯誤を繰り返し、2年ほど経った頃に井澤製粉の営業の山本さんと出会い、小麦粉や製麺のことなど色々とアドバイスを貰いました。

 和海のらーめんは、後半にピークを持ってくる作り方をしているのですが、その思いを聞いてもらい提案してもらった粉(北古都と夢小路)が和海、和心のらーめんを支えてくれています。日々進化、日々改良を考える和海のらーめんにとって、井澤製粉さんは欠かす事の出来ないビジネスパートナーです。」


山内店主(拳ラーメン)

「井澤製粉さんとは"こぶ志ラーメン"時代(移転前)からお付き合いをさせて頂いています。今は年に一度の"京小麦の収穫祭"で二年連続でお世話になっています。京都の土地で生まれた小麦を生かし年々と成長を遂げるイベントをして頂けるのは、僕達も励みになり感謝しております。」


袖岡店主(らぁ麺 とうひち)

「井澤さんには開業して一年過ぎた頃からずっと御世話になっております。地元京都唯一の製粉メーカーさんでありますので対応も早く、小麦粉の事や製麺の技術面など色々と教えてくださるのでとても助かっております。」


三田店主(麺屋さん田)

「僕と井澤製粉さんとの出会いは非常に運命的なんです(笑)。独立に向けてほぼ知識のなかった自家製麺をするにあたり、開業前にとうひちの店主袖岡氏のご厚意で製麺しているところを見学させて頂く機会がありました。

 その見学をしているところに井澤製粉の敏腕営業マン山本さんがたまたま現れました。袖岡氏にまさに今、独立開業を目指しており自家製麺をするにあたり製粉会社さんを探していると僕の事情を説明してもらいました。僕はこういう状況に運命を感じてしまう単純な男なので、その場で井澤製粉さんと取引させて頂くことを決めました。そして、開業以来、現在に至るまで100%井澤製粉さんの商品で製麺をし続けております。」


谷口店主(つけめん 恵那く)

「麺屋裕さんの紹介でサンプル麺を作って頂いたのがきっかけでお付き合いが始まりました。2016年12月から自家製麺に切り替わりましたが、その1年前から何度も何度も試作に付き合って頂きました。現在もイベント用の麺の配合で的確な助言を頂き本当に感謝しております。」


中野店主(セアブラノ神)

「当店は井澤製粉さんから麺屋棣鄂に納品され製造された物を使用しました。何種類か提案してもらい当店はつけ麺用を使用しました。

 京小麦はどんどん美味しくなっていますので、多数のお客様に喜んでいただいています。」


上嶋店主(あいつのラーメン かたぐるま)

今まで4種類の粉を混ぜて麺を作成していましたが、人出不足で製麺時間の短縮を考えていた時に専用のミックス粉を提案してもらい、大手ではやってもらえない小ロットからでも可能ということで関わることになりました。

 店で粉を混ぜていた時と比べると三分の二ほどの時間で作成できるようになり、麺の出来栄えもよくなりました。」


松本店主(麺処 蛇の目屋)

「一条寺の"びし屋"宮本店主からの紹介で井澤製粉さんの営業山本さんとのお付き合いが始まりました。最初はまぜそば用の粉だけの取引でしたが、麺についての悩みを相談するとこれがバッチリ解決!イメージ通りの麺に仕上がるんです。で、気が付いたら全て井澤製粉さんの粉に変わっていました(笑)。

 それ以降は信頼出来るパートナーとして何かあれば連絡を取り合う関係になり、今では姉妹店の"京つけ麺つるかめ"の専用粉(オリジナルのミックス粉)も井澤製粉さんに作って頂いています。

 京都府産の京小麦が強力小麦に変わり今年で2年目!井澤製粉さんと共にメジャーにしていけたらなと思っています。」



 

 (取材・文・写真 KRK 令和2年3月27日)