Vol.147:らぁ麺 幸跳


 2017年5月、静岡からの帰路で愛知県豊橋市に寄り道をした。どこかへ行く途中、何度も通過していた豊橋市に初めて来たのは、気になるお店があったからだ。それが今回取材するお店、らぁ麺 幸跳だ。

 初訪問でとても気に入ったので、片道4時間ほどのこのお店にもう4回目の訪問となる。"らぁ麺 幸跳"松永店主にKRK直撃インタビュー!


- 出身は?

「生まれは東京です。7歳の頃に豊橋市に来ました。」

 

- この世界に入るきっかけは?

昔バンドをしていて仕事もせずにフラフラしていたんですけど、20歳過ぎくらいに『ちゃんと働かないといけないな』と思い、福祉関係の仕事を始めました。でも、人からいろいろ言われて何かするというのが苦手だったので、福祉の仕事をしながら『何か自分でできる商売がないかな?』と考えていました。1人で拘ってやっていける仕事と絞っていくと、浮かんできたのがラーメンとカレーでした。」

 

- ラーメンは好きだったんですか?

「そこまでラーメンを食べていなかったので、イメージとしては醤油、塩、豚骨、味噌で、辛いか辛くないかって程度でした。ラーメン屋をするのに興味を持ってから、いろんな店で食べてみたら凄く進化していて、そして美味しくて驚きました。魚介がなんだとかで(笑)。それからラーメンに嵌って、いろいろ食べにいくようになりました。」


- どこかで修業とかは?

「僕は全て自己流なんです。福祉の仕事をしながら、自宅で6年ほど実験していたんです。独学なのでラーメンのレシピ本とか見たりしていました。」

 

- 6年間!そんなに長い期間の自作は聞いたことがない(笑)

「5人前とか作ってできる世界じゃなく、でかい寸胴で50人分とか作っていかないと駄目だと思っていました。それでとても大きな寸胴を買ってきて、自宅で50人前とか作っていました。多く作っても3食分ほどしか自分では食べれないので、残りはカレーの出汁にするか、捨てるしかない。でもお店をするためには大量に作れないと意味が無いと思っていましたから。」

 

- いろんな系統のラーメンを自作していたんですか?

「自分は醤油ラーメンが好きで、醤油に特化したメニューを考えていて、調べていろんな醤油を取り寄せて使っていました。基本は端麗、今のベースですよね。

 最初にシナさん(インタビュアー)が2017年に来てくれた時に食べてくれた鶏魚介清湯、あれが6年間ほど実験して辿り着いたラーメンなんです。」


らぁ麺 幸跳(2015年3月19日オープン)


- この場所に決めた理由は?

「豊橋はうどん文化の街で、当時はラーメン不毛の地と言われていました。ラーメン屋もどっちかというとコテコテの濃い味の味噌や豚骨が多かったですね。でも地元でしたいという想いが強くありました。いろいろ探していて、駐車場があったのでこの物件に最終的に決めました。周りもスナックなので、昼は駐車場を全部使えますしね。」

 

- 屋号の由来は?

「ウチのラーメンを食べて、お客様が幸せに跳ねてくれたらいいかなって思って決めました。ネット時代なので検索して似てる屋号が無くて、すぐに出てくる屋号で考えました。

 

- オープンして順調でしたか?

「3年ほどは本当に苦しかったですね。この辺りは夜になると本当に寂しいんです。『これでは厳しいな~』って悩んでいましたね。それからお客様が口コミで徐々に広げてくださって、お客様が増えてきました。本当に上向きになってきたのは3年目の頃からですね。そして本当に地元のお客様が来てくれるようになったのはミシュランが大きかったです。」

  

- 昼営業だけにしたのは?

オープン当初、本当にお客さんがいなかった頃に"めん奏心"鈴木店主が静岡から食べに来てくれたんです。鈴木店主も独学で始めた方で、僕に『夜営業なんてやめちゃえ!』と言ってくれたんです(笑)。少し早めにオープンして後半を延ばしたら、夜営業の分もカバーできるよって。それから10時半オープンにして、夜営業はやめました。それで正解でしたね。夜はこの周辺はシーンとしていて、本当に人気が無いですから。」



- オープン当初のメニューから、最近、商品をリニューアルした理由は?

「自宅で実験している時、6年間も乾物の鶏魚介をしていました。自作で6年、店をオープンしてからで3年、合計で9年も同じラーメンをしていました。毎日同じことをしてきて作り手が気が乗らなくなってきてて、そういうのはよくないなと思いました。もう一度、自分が熱中できるものを作りたいと思ったんです。

 鶏魚介を9年ほどしたので、次は動物系だけ、鶏と水だけでやってみようと決めました。そしていつか最終章みたいな感じで、今までのを合わせてやってみたいなと考えています。だから今は魚介に頼らずにしています。逆に煮干しは動物系を入れずにしています。」

 

- リニューアル後のお客様の反応は?

「今の商品の方がインパクトが強いし分かりやすいので、お客様からの評判がいい。鶏だけの方が分厚くなりますからね。昔の鶏魚介清湯は緻密なのでマニア寄りの味で、一般の人には向いていなかったんです。」



- 塩をやめたのは?

「僕は醤油が好きでスタートしたので、醤油をどんどん突き詰めてやっていきたいなという気持ちがありました。そして塩を出して一番嫌だったのは、胡椒とかバンバンかけているお客様があまりにも多過ぎて(笑)。豊橋は濃い味の文化なので、それは仕方が無いんですよ。それこそ30秒くらいカチカチカチと胡椒をかけている音が店内に響いていて、『なんか辛いな~』って思うこともありました。

 自分も塩ラーメンで有名な店をいろいろ廻っていて、皆さん、同じ経験をしているんでしょうね。だから皆さん、濃度が上がってきているんですよね。それで『もう塩なんかやめよう!』と決めました。今は醤油、たまり、煮干しの3本で営業をしています。」

 

- たまりを始めたきっかけは?

「以前に参加した某イベントで、武豊町の"たまり醤油"を使ったラーメンを作ってみたらとても良いのができたんです。たまり醤油は小麦とか一切入っていなくて国産の丸大豆と塩だけなので、その分、大豆が倍くらい入ってて醤油より旨味が強くて色が濃い。豊橋は濃い文化なので、その商品は大ヒットしました。」

 

- 今後については?

「今は醤油とたまり、煮干しの3本。煮干しは動物系ゼロで煮干しと昆布だけ。今はわざと別々にして、動物は動物、魚介は魚介で出しています。そしていつか集大成として、全てをドッキングしたのを出したいと考えています。」

 

- 松永店主が大事にしていることは?

「知名度が上がってくるにつれて、新たなお客様が増えてきています。昔はマニアックなお客様にのみ受けていたって感じですが、今はいろんなお客様に気に入ってもらえるように作っていきたいと思っています。自分は醤油ラーメンが好きなので、やっぱり醤油に拘った商品をやっていきたいと思っています。

 たかがらぁ麺、されどらぁ麺、昔ながらで現代(いま)の味を心に掲げ日々精進していきたいです。」



 <店舗情報>

■らぁ麺 幸跳

住所:愛知県豊橋市東脇3-9-5

ブログ:https://ameblo.jp/sacchimo33/

twitter:https://twitter.com/sachihane0319

オープン日:2015年3月19日

 (取材・文・写真 KRK 令和元年11月4日)