うどんの名店が何十軒も集まっている激戦区である香川県丸亀市に、異色のラーメン屋が2014年11月にオープンした。屋号は「ラーメン★スペイス 黄昏タンデム」。「地元の人も知らない人が多いんじゃないか?」と思うような場所で営業しているお店だが、店主はなんと大阪の名店「洛二神」出身。私の知る限り、洛二神から正式に独立したのはこの店主だけだ。
うどんが主流のうどん県でラーメンをするだけでも大変なチャレンジなのに、こんな偶然には見つからないような場所で営業しているのにも驚いた。そして提供しているラーメンもまた個性がある!営業終わりに取材する時間を作っていただいたので、どういう経緯で洛二神と出会い、この地で開業したのか聞いてみようと思う。「ラーメン★スペイス 黄昏タンデム」蛭子店主にKRK直撃インタビュー!
- 出身は?
「大阪生まれ、大阪育ちです。」
- 飲食をするきっかけは?
「アルバイトを転々としていた時期があって、うどん屋さんで働いていた時とかに飲食に興味を持つようになりましたね。」
- 修業店(洛二神)との出会いは?
「結婚する前、あの辺りに住んでいたんです。それで洛二神が雑誌とかで取り上げられるようになって知りまして、食べにいってみました。それで洛二神のラーメンを食べて衝撃を受けて、それから通うようになりました。その時はまだ食べる専門で、ラーメン屋をするとかは全く考えていなかったです。」
- 洛二神で働くようになったのは?
「ある時、洛二神が募集をしていると知りました。ちょうど働いていたお店が潰れるって時期だったので、洛二神で働いてみようかなと思いました。ラーメン屋をしたいとかじゃなくて、好きなお店だったからという理由でしたね。洛二神が売れ始めた頃だったので、15年ほど前のことです。」
- 初めてラーメン屋で働いて、どうでしたか?
「最初は夜のアルバイトで入らせてもらいました。昼は松村店主がメインでしていて、僕は夜メインだったので松村店主とあまり接点が無かったんですが、しばらくして夜のメインで働いていた社員さんが辞めるということで、僕が夜の担当みたいな感じになりました。それから松村店主といろいろ話すようになり、『どこの店が美味しいよ!』とか聞いて、ラーメンというものに興味を持つようになっていきました。」
- 独立も考えていたんですか?
「まだ独立とか全く考えていなかったんですが、松村店主に毎日味見させてもらっていて、『今日はこういう状態だからこうなっているんだよ』とか営業しながら教えてもらったりして、『毎日していてもこんなに変化があるんだな』とかどんどん興味を持っていきました。それで『ラーメンって面白いな~』と思い、大阪のラーメン店をいろいろ食べ歩きするようになっていきました。」
- 独立を決心するきっかけは?
「嫁の実家がこの近く(香川県丸亀市)で、この場所も元々、嫁のお父さんが何年も前に蕎麦屋さんをしていた場所なんです。その後、何人かに貸していたんですけど、ちょうど空いたタイミングでお父さんから『お店をしたいなら、よかったらここでしてもいいで!』という話がきました。」
- 大阪から離れた場所での独立、迷いましたか?
「よく嫁の実家に遊びに来ていたし、のんびりしていてとても良い印象の県だったので、『ここでなら独立してもいいかな』と考え始めました。大阪では自分で独立するとか考えたことが無かったんですがね。嫁も飲食店で働いていたりしたので、それなら二人でしてみようかということになりました。」
- 松村店主には?
「それから松村店主に相談して、独立することを決めました。洛二神に入って3年目の頃でしたね。お店をすると決まってから1年間、いろいろ作り方とか学ばせてもらいました。」
黄昏タンデム(2014年11月11日オープン)
- 屋号の由来は?
「店をするなら『THEラーメン屋みたいな名前にはしないでおこう』と考えていました。松村店主も『麺屋蛭子とかやめといた方がいいよ。』と言ってくれていました。それで嫁と二人でするから好きな名前にしようってことで、二人とも音楽が好きなので『曲のタイトルみたいな感じの屋号にしよう』と決めて、尚且つ、漢字とカタカナの組み合わせがいいなと思いました。それから好きなミュージシャンの曲名を繋げたり、いろいろ二人で考えましたね。タンデムという言葉を思いついた時も、調べてみたら『二人乗り』って意味だったのでちょうどいいと思いました。ラーメン屋、麺処、麺屋とかじゃなくて、何か新しい言葉が無いかなと考えていてラーメンスペイスが浮かんできました。」
- 提供する商品は悩みましたか?
「香川のラーメン事情とか全く分からず来たので、元々、修業店(洛二神)が煮干しを使っていたお店なので魚は使おうとは決めていました。そしてこの地域では伊吹いりこが有名なので、伊吹いりこで作ろうと考えました。ただ、この地域ではこってり系とあっさり系、どっちが受けるのか分からなかったので、最初は両方の商品で始めました。最初はあっさりがよく出ましたね。」
- つけ麺も香川では珍しかったでしょうね。
「洛二神ではつけ麺を食べる人が多かったんですけど、こっちではオープン当初は全く出ませんでしたね。でも途中からだんだん(つけ麺の)注文が増えていって、今ではつけ麺しか食べないお客様もいるくらいで、売り切れも時々あるほどの人気商品となっています。」
- 商品の紹介をお願いします。
「スープはダブルスープ、伊吹いりこをふんだんに使った和風出汁をメインに、醤油ダレには小豆島の醤油を使用したりと香川を意識したメニューになっています。
塩はベースのスープは醤油と一緒ですが、タレに塩を3種類くらい使っていて、こちらも魚介寄りの塩に仕上げています。」
- 店の内装も個性ありますね。
「自分たちで手造りでやろうと思い、二人で大阪にいた時に持っていたものとか、二人の趣味の感じを出そうと思いました。それで自然にこういう風になりましたね。メニューのイラストとかは嫁がデザインの学校を出ているので、嫁が担当です。」
- 蛭子店主が大事にしていることは?
「僕はラーメン屋を経験したのは洛二神だけなんです。今思うと、洛二神が自分に合っていたんだなと思います。洛二神では、商品に真面目に向き合う姿勢、素材に拘って決して手を抜かないことを学びました。楽しようとして『これ使ったらいいや』って考えには決してならなくて、難しくても天然のものを使い続けることを学びました。その辺がやってて面白い部分でして、これからもやり続けることだと思っています。」
- 最後に一言お願いします。
「せっかく香川県でラーメンをすることになったので、今までと違った流れを作っていけたらいいなと思います。」
<店舗情報>
■ラーメン★スペイス 黄昏タンデム
住所:香川県丸亀市綾歌町岡田東1597-2
instagram:https://www.instagram.com/tasogaretandemu/
facebook:https://www.facebook.com/tasogaretandemu
オープン日:2014年11月11日
(取材・文・写真 KRK 令和元年9月4日)