Vol.116:煮干し一直線


 ここ数年、奈良の新ラーメンスポットとして盛り上がってきている王寺町に、2019年2月13日、新たなラーメン店が加わった。屋号は「煮干一直線」だ

 驚かされたのは、この新店は大阪の人気店「ふく流らーめん 轍」の新ブランド店だということだ。ミシュランガイド大阪ビブグルマンにも掲載されたことがある名店が、奈良に初進出。これはビッグニュースだ!修業時代に数々の名作(限定)を生み出し「天才」と呼ばれていた福山店主が、奈良の地での新ブランド店に用意したのは、煮干しラーメンだ。「煮干一直線」福山店主にKRK直撃インタビュー!



- 新ブランド誕生のきっかけは?

「昨年、ウチを株式会社にして、(株)ふく流 JAPANという会社名にしたんです。JAPANって入っているじゃないですか!それで日本の食材、僕ら自身も誇りを持てるモノって考えた時に"煮干し"が思い浮かんだんです。煮干しって外国の人にはまだまだ馴染みが無いですよね。僕自身もその煮干しを突き詰めたことがなかったので、今回、いろいろ調べて各地を廻ってみました。それで伊吹産の煮干しに出会ったんです。」

 

- 他の煮干しと違っていたんですか?

「『こんなに違うんだ!』って衝撃を受けましたね。見た目もピカピカ光っていて感動でした。調べてみたら、伊吹島は"煮干しだけの島"だと知りました。どこの漁船が水揚げしても、一気に乾燥させてすぐに煮干しにするというのを島全体でしている。知れば知るほどハマってしまって、それで煮干しメインで新ブランド店をしたいと思いました。」


煮干し一直線(2019年2月13日オープン)


- 屋号の由来は?

高岡君(麺屋NOROMA店主)とコラボで"奈良ラーメン博"に出店した時、二人で燕三条系ラーメンをしようってことになったんです。でも燕三条系ってマニアックな人達の間では分かるけど、普通の人には伝わらない。だから『何か分かりやすい名前がないかな?』って考えて、それで浮かんだのが"煮干し一直線"でした。僕はその名前がとても気に入ってしまって、それで高岡君に『今度の煮干しの新店で使わせてよ!』ってお願いしたんです。」

 

- 奈良に出店するきっかけは?

「ウチの店長が物件を見つけてきて、実際に見に来ると『いい場所だな~』って思いました。全部縁ですね。役場に挨拶に行くと、ラーメンが好きな人が多いのに驚きました。」

 

- 奈良のラーメン事情については?

「修業先が同じだった高岡君がいろいろ教えてくれていて、何軒かは食べに行かせてもらいました。奈良のお店って同じエリアに固まらず、離れていますよね。でもそれぞれに行列ができていて、凄くいいお店が多いです。」


特製煮干し一直線


- 新ブランド店の商品は悩みましたか?

今っていろんな系統のラーメンが次々に出てきているじゃないですか!だから僕は逆にシンプルなもの、自分が食べたいと思っていたものを作ることにしました。」

 

- 商品の紹介をお願いします。

「看板メニューの"煮干し一直線"は、ダシも水出ししかしていない。僕らって『炊かないと勿体ない!』という意識があるんですけど、火を入れたらどうしても苦みが出てしまうんです。炊くと炊かないでは全然変わる。水出しでとったダシが一番いいと僕は思っていて、ボディが薄いわけでないし、これだったら煮干し嫌いな人でも食べれるだろうなって思います。

  "煮干し醤油"の方は和だし、うどん出汁に近い感じですね。麺は同じ麺を使っているんですけど、一直線の方は手揉みで縮れにしています。」

 

- 轍の名作であるマゼニボジャンキーが奈良で食べれるのが嬉しいですね。

「僕が独立して轍を始めた時には、まだ"まぜそば"メニューが無かったんです。ある日、常連のお客様から『まぜそばを作ってみてよ』ってリクエストがあり、その場で作ってみたらメッチャ美味いのができたんです。それがマゼニボジャンキー誕生のきっかけでした。一直線だけだと、どうしても客層が限られてくる。マゼニボジャンキーがメニューにあることで、一直線みたいな商品をやりやすいんですよね。」


【動画】「煮干し一直線」を作ってもらいました。


- 新ブランド店での店舗展開も考えていますか?

「考えています。このブランドをメチャ気に入ってしまったんですよ。6月になったら伊吹島へ行って水揚げとかして、もうちょっと煮干しについて勉強してこようと思っています。」

 

- 最後に一言お願いします。

「煮干しラーメンって今、けっこう広まってきていますよね。地域によってはもっと濃く、もっと灰色にってのがあるけど、外国の人はそういうのを食べれない。せっかく日本の文化なのに嫌いになってもらいたくないなって思います。外国から日本へ多くの観光客が来ている時代なので、僕は外国の人たちにも煮干しラーメンを楽しんでもらいたい。ラーメンがもっと誇りに思えるような文化になっていけばいいし、そういうところまで絶対に行ける食べ物がラーメンだと信じています。」



 <店舗情報>

■煮干し一直線

住所:奈良県北葛城郡王寺町

オープン日:2019年2月13日

twitter:https://twitter.com/niboshi_0213

instagram:https://www.instagram.com/niboshi_icchokusen/

(取材・文・写真 KRK 平成31年2月14日)