Vol.58:麺屋AMORE


 静岡に別件で行ってる時に、浜松の人気店の店主から一人の男性を紹介された。その男性は大阪の人気店で修行をしてたようで、「今度、地元浜松で自分の店を持ちます!」と力強く言っていた。

 それから数ヶ月が経ち、2017年6月13日、浜松に新店がオープンした。屋号は"麺屋AMORE"。そう、あの時の男性が遂に独立開業した店だ。イタリア語でAMOREは"愛、愛情、恋"を意味する。麺屋AMOREが提供するのは"鰹"を柱にした地元愛に満ち溢れたラーメンのようだ。店主も十分に分かってると思うが、ここからが本当のスタート。"麺屋AMORE"石坂店主にKRK直撃インタビュー! 


- 出身は?

「静岡県浜松市です。高校を卒業してから、地元で就職して4年間働いていました。」

 

- その頃、ラーメンは好きでしたか? 

「近所に"みやひろ(支店)"って凄い老舗があって、歩きで時々通っていました。でもラーメンばかりを好きってほどではなかったですね。

 それから漠然とした理由で会社を辞めて、東京へ行ったんです。東京ではいろいろしていましたね。当時、浜松にはみやひろさんとかそういうラーメンしか無かったんですが、東京に行ったら渋谷のすずらんさん、僕の大好きなこうかいぼうさん、吉左右さんとか。そういうラーメンを食べて衝撃的で、『あっ、ラーメン屋って面白いな~』って思いました。店の雰囲気も素敵だなって思いました。」

 

- 作る方、食べる方、どっちに興味持ったんですか?

「『自分でラーメンを作りたいな!』って思ったので、それからラーメン屋や中華料理店とかで働いていました。東京には4年いて、それから地元に戻りました。地元に戻ってから『自分で店をやりたいな』ってやっぱり思ったんですが、当時まだまだいろいろ足りなくて、お金も足りないしって。これはアカンなって悩んでいましたね。」



- 悩んでから??

「『じゃあ、何しようかな?』って考えてる時に突然に思い立って、『自転車で日本一周しよう』と思いました(笑)。」

 

- 突然? 自転車が趣味だったんですか?

「全く(笑)。悩んでいて自暴自棄で半分逃げるみたいな感じで、日本一周行こうかなって。その日に自転車を買って、翌日に『じゃあ、行ってくる』って。周りは心配していましたね(笑)。」

 

- 日本一周に出発して?

「まずは北へ行って、東北の被災地を見てから、更に北上して北海道をグルって廻ってました。いろんな人がいて、いろんな人生があるな~って思って、考え方が広がりました。その時も『やっぱり自分の店がやりたいな~』って思っていましたね。ラーメン屋か居酒屋がしたいって。お酒も好きだし、人と話すのも好きなので。」

 

- 旅を続けて?

「北海道から南下して北陸に行って、それから大阪へ来ました。大阪では友達の所に1か月間ほど泊めてもらい、大阪や京都の観光地とか楽しんでいました。ある日、その友達の知り合いが不動産をやっていて、『2万5千円とかで暮らせる所あるで?大阪に住んでみたら?』って言ってくれました。もう秋だったので『冬は自転車は無理』って思ってたので、大阪に1年くらい住んでみようって決めました。大阪の雰囲気がとても気に入ったんです。物価も安いし。」

 

- 大阪での生活はどうでしたか?

「難波の中華料理店でバイトしていました。それで1年くらい経った頃、『やっぱりラーメンやりたいな~』って初心を取り戻したんです。」


 - 再びラーメンをやりたくなって?

「当時、大阪で一番有名だった店が"麺や 而今"でした。それで調べてみると、ちょうど而今がスタッフ募集してたんです。それで話しにいったら、『いいよ』って言ってくれました。それから四ツ橋店(2号店)のオープニングスタッフとして働き始めて、本店でも働かせてもらったりしていましたね。その間に大つけ麺博(歌舞伎町)や広島の催事とかもさせてもらって、本当に良い経験をさせてもらいました。かなり忙しかったですが、有名店でないと経験できないことってあると思うんです。」

 

- 最初から独立志望?

「面接の時に『2年後に独立したい』ってのは伝えていました。地元に恩返しするって気持ちもあり、地元に戻るってのは決めていました。外に出てみると『やっぱり地元がいいな』って思いましたね。それで2016年の夏頃から店長やマスターとかに、『場所を探しながらやらせて下さい』って言っていました。」


麺屋AMORE(2017年6月13日オープン)


- 屋号の由来は?

「修行時代に限定ラーメンを時々させてもらっていて、最初は『石坂プレゼンツ』とかでしてたんですが、ある人に『なんか面白くないな。いろいろしてみたら?』って言ってもらったんです。『じゃあ、アモーレ石坂でやってみます!』って(笑)。"ケンブリッジ石坂"とかもしていましたね(笑)。その中でもアモーレ石坂がとても評判良くて、店の常連さん達からも『アモーレ、アモーレ』って言われるようになったんです。それで屋号をいろいろ考える時に、諸先輩たちにも相談してたんですがなかなか無くて、ある時、『じゃあアモーレにしたら?』って誰かが言ってくれて。」

 

- 迷いませんでしたか(笑)?

「たしかに、間違いなくインパクトはある屋号だし。でも『流行に乗っかった』って思われるのも嫌だし。でも皆さんから『アモーレ』って呼んでもらっていたので、それでいいかって決めました。」


- 静岡のラーメン事情は調べていたんですか?

「それが全然調べていなくて。場所探しでいっぱいいっぱいでした。ただ、龍壽さん(twitter)がオープンの時は全国的に話題になっていたので、龍壽さんのことだけはなんとか知っていましたね。」

 

- 出塚さん(現・龍壽店主)とは?

「元々は知り合いじゃなくて、僕の友達の福原さん(現・麺や 福はら店主)からの紹介で知り合いました。僕が龍壽さんに食べに行って挨拶させてもらいました。それから出塚さんから不動産屋を紹介してもらって、今の場所が決まりました。本当に感謝しています。」

 

- 浜松での店同士の繋がり?

「出塚さんから"おえかき"但田店主、"豚鬼"西塚店主とか紹介してもらいました。ホントありがたかったです。最初は全く何も知らない状態で、物件とか一人で探していましたから。それから内装業者を紹介してもらったりして。周りにとても恵まれました。」


特製バリ鰹らーめん


- 麺屋AMOREのラーメンについて。

「自分が東京にいた時にとても気に入ったのが"こうかいぼう"って店。王道とはちょっと外れてる感じの出汁感が強い豚骨魚介でその味が凄く好きだったんです。それに僕が鰹が好きってのがずっとあったので、『鰹をすごい効かせたライトな豚骨魚介をやりたいな』ってずっと思っていました。今、煮干しが流行ってるんですが、僕は煮干しよりは鰹。鰹を焦点にしてるラーメンってあまり無いじゃないですか。だから面白いかなって。」

- オープンして?

「大阪とは全然違う感じですね。味の嗜好とかも。今も調整中ですし、まだまだ美味しくできるなって思っています。僕は大阪より静岡の方が濃い味が好きな人が多いと思いますね。」

 

- 最後に一言。

「まだ『これだ!』って材料が見つかってなくて、いろいろ試してる段階です。できるだけ地元の食材を使いたいなって思っています。豚肉も静岡県産のを使っています。どこにも無いスープ、鰹感をしっかり楽しめるラーメンを作りたいなって思っています。」



<店舗情報>

■麺屋AMORE

住所:静岡県浜松市浜北区寺島2725-2

Twitter: https://twitter.com/Amorehamamatu

(取材・文・写真 KRK 平成29年8月)