ラーメン激戦区として注目店が次々とオープンしている奈良ラーメンシーンに、2015年9月末、新たな店が加わった。私はだいぶ前からSNS情報で知っていたので、かなり期待もしていてワクワクしていたものだ。店主は札幌のラーメン横丁の名店"天鳳"出身。その後、横浜で独立開業し、今回、奈良に移転してくるという異色のキャリアの持ち主。
奈良ラーメンの新たな選択肢としての期待、そして関西の影響を受けていない全く違うベースを持った新風としての期待。札幌ラーメンを謳う店は山ほどあるが、本場から本格派がいよいよ奈良に登場したわけだ。昼営業終わりに話す時間を作って頂いたので、久しぶりにお話しさせて頂きました。"らーめん春友流"佐藤店主にKRK直撃インタビュー!
- 出身は?
「北海道の苫小牧市です。」
- ラーメンとの出会い?
「大学で札幌へ行きました。その時に友達の紹介でラーメン屋のバイトを始めたんです。最初働いた店がラーメン横丁に当時あった"めんたんぴん"です。雪祭りの時ってラーメン横丁が凄い売れるんですよ。その時にラーメン横丁でバイトしてた友達に短期バイトで誘われて、最初は一週間だけの予定だったんです。でも動きが良かったのか、そのままバイトを続けることになりました。それから2年くらいバイトをした頃、その店が閉店することになり、同じラーメン横丁内の天鳳から誘われて、そちらで働くことになりました。"めんたんぴん"ではスープの仕込みからいろいろできるようになってたので、マスターがいない時も一人で店を廻せれるような感じだったので、天鳳ではいきなり一人で廻すって状態でしたね。大学を4年で終われずに2留してるんで、天鳳では4年ほどお世話になりました。」
- 卒業する時?
「天鳳のオーナーに『卒業してもそのまま働かせてください!』って言ったんですが、『駄目だ』って言われたんです。『お前、大学卒業して社会に出ずにラーメン屋をしたら駄目になるぞ。ウチにはいさせない』って。卒業を数ヶ月後に控えていて『え~』って。そのまま天鳳で働くものだと思っていたので驚きました。店の方も僕がいなくなれば大変なのは分かってたんですが、親心ですね。『社会に出た方がいい』って。」
- それで就職活動?
「2留してるんで普通の就職活動ができないんですよ。それでハローワークに行って、医療機器を扱ってる会社に就職しました。営業マンですね。その仕事が結構面白くて。立ち合い業務って感じで手術室に入ったりするんです。心臓の手術に8時間とか立ち会ったり。でも移動がとにかく大変でしたね。前の日が帯広にいて、その翌日に苫小牧でって。年間7万キロほど運転してましたから。」
- ラーメンからは完全に離れてたんですか?
「僕がラーメン屋で働いてた経験があるってのが社長には響いてたらしく、病院の人とか業者とか集まった時のイベントで骨からラーメンを仕込んだりしました。そのラーメンの評判良くて、それで『ラーメン佐藤』って呼んでもらえて、いろんな方に可愛がってもらっていました。それでいろいろ繋がりができました。お世話になった会社を退職した後は、外資系の医療機器の会社から誘ってもらえました。」
- いつか自分のラーメン店をしたいって思っていたんですか?
「その時はまだ強くは無かったです。ただ、最初の会社を辞める時に結婚することになったんですよ。その時に嫁さんには『いつかラーメン屋をする』って言ってたんです。」
- 新しい会社では?
「札幌で3年間いたんです。それから横浜に転勤になったんです。その頃は昼は必ずラーメンを食べてるくらい、いろんな店で食べてましたね。横浜では最初、友達いないんですよ。それでブログ書くになったんです。」
- ブログですか?
「iPhoneのブログを書いてたんです。iPhoneのブログを書いてると、当時、同じようなブログ書いてる人が他にもいたので自然に集まるようになって、それでブログが楽しくて。仲間も増えてきて、いろんな人と会うようになってきて楽しかったですね。そして、その集まりの時に僕がラーメン作る機会がありました。そこでガチのラーメンを作ったんですよ。そのラーメンが凄い美味しいのができて、仲間がそれぞれしてる人気ブログで絶賛してくれて『春友ラーメン凄いらしいぞ』って噂が拡がりました。」
- 春友ラーメン?
「春友って呼ばれてたんです。ブログのペンネーム的なものです。当時、Twitterのアカウントが二人の子供の頭文字を使って"春と友"で春友です。で、ブログも春友流。ブログの名前を作った時は「いつかラーメン屋をする時の屋号にしよう」って考えていましたね。」
- ブログの存在が大きいんですね?
「横浜以外でも、名古屋にも友達がいろいろできてきたので、名古屋でもラーメンを作ってブログ仲間から大絶賛されて。その頃、仕事も行き詰ってきていたんです。それで嫁さんに『ラーメン屋をやっていいか?』って相談しました。」
- 奥様の反応は?
「絶対に駄目だって言うと思ってたんですけど、結婚した時から『いつかラーメン屋をやるよ』って言ってたので、『あ~、遂に来たか』って思ったようです。それが2012年末でしたね。すぐに会社の上司に相談して、翌年の3月に退社させてもらいました。」
- ラーメン屋オープンに向けて?
「会社の引き継ぎの間にラーメン屋開業の準備をしていました。どこでやろうか悩みましたね。横浜の人口は魅力的だったので横浜で物件を探しました。関東のブロガー仲間も応援してくれるし。」
- 春友流がオープンした日は?
「2013年6月です。」
- どんなラーメンを?
「ブログ仲間に提供してた醤油ラーメン。醤油オンリーでした。ベースは天鳳の醤油。そこからどんどんアレンジしていました。横浜って家系があるじゃないですか。一種類のラーメンだけの店が多かったので『醤油だけでいいか』って思っていました。」
- オープンしてから?
「まぁ~、ブロガー仲間に作ってた時のような味が出ないんですよ。作る量とか火力とかいろいろ原因があったんですが。最初は良かったんですが、痛恨のスープが良くない時があったりとか。オープン当初はブロガー仲間のお蔭で『こんなに売れるの?』ってくらいだったんです。でもある日から『今日どうしたんだろう?』ってお客さんが減ってきてて、そして6ヶ月後、年末、寒くなってきてるのにどんどん売り上げが減ってきて、年明けてドン底になって。」
- 理由は分かっていた?
「味のブレですね。作り方もコロコロ変えていたり。サラリーマン時代のブランクがありましたし。仲間に出すような単発で作るのは巧くいってたんですけど、デカい寸胴でデカい火力で作ることに慣れるには半年かかりました。それで『醤油だけだとマズいな』って思って、味噌ラーメンをすることにしました。」
- 味噌ラーメンを一から?
「味噌ラーメンのタレ作りからですね。知り合いの料理人の人とかも手伝ってくれて、一から作りました。思い浮かべてたのは札幌味噌スタイル。中華鍋で作るスタイル。そこは絶対でしたね。いろんな味噌をブレンドして1か月半くらいでなんとか形になりました。」
- お客さんの反応は?
「当時、味噌ラーメンの店がほとんど無かったです。だから北海道味噌ってことで評判よく、来なくなってたお客さんも戻ってきましたね。ドカーンってわけでなく、徐々に安定してきました。それから横浜で2015年の8月まで2年ちょっとしていました。」
- 移転?
「休憩無しで通し営業でずっとしてたんです。みっちり働いてて、子供と触れ合う時間が全くなかったんです。店の作りとかもいろいろ不備がでてきてたし。いろんな理由が重なってきて。席が19席もあったんです。そういうのもあって、もうちょっと小さい店でしたいって。最初、横浜市内での移転を考えてたんです。でも横浜市内で全然物件が無い。1年くらい探していましたね。時々、鎌倉とかも。希望の物件が出てこない状況が続いていて、それなら北海道か奈良にってことになりました。 」
- 自分の地元か、奥様の地元ですね?
「どっちかって考えたら、子供を育てることも考えたら奈良って。奥さんの親元の方がいいなって。夏とかGWとか奈良に帰ってたので、育てるなら奈良かなって。」
- 奈良ラーメン事情を調べていましたか?
「いろいろ奈良のラーメン状況を調べました。食べログとか上位のほとんどの店のレビューとか読んでて、それで『これ、味噌ラーメンいけるんちがうか?』って思いました。北海道に戻って西山製麺で味噌するより、奈良でする方がいいですから。子供のこと、ラーメンのことも考えても『これ、奈良だよ』って。」
らーめん春友流(2015年9月28日オープン)
- 場所?
「何軒か見たんですが、3軒目くらいでこの場所を見つけました。駐車場とかは考えてなかったですね。駅近で探していました。奈良市内には拘っていましたね。理由としてはブロガー仲間が来るって思ってたんです。新大宮駅から歩いて来れますから。」
- 奈良でオープンして?
「またブレたんです。ガスと水ですね。横浜のスタートの時ほど酷くはなかったですが。」
- 宣伝は?
「ひっそりとオープンしました。横浜ではブロガー仲間がいたのでお祭りみたいな感じだったけど、こっちではひっそりオープン。それが正解でしたね。いろいろ調整とかしていけましたから。」
- 奈良ではいろんなラーメンを出しているんですね?
「奈良では嫁さんが一緒に働いてるので、賄いを作るんです。賄いからいろんなラーメンが生まれました。まぜそば、中華そばとか。」
- 今後は?
「関東にお客さんがいるので、関東に出したいですね。子供が手を離れるまでは奈良にずっといますが、横浜や東京にはいつか出したいです。東京五輪が終わった後くらいがいいかなって思ってます。」
- 大事にしてることは?
「ウチの企業理念は『ラーメンで笑顔を』なんです。ラーメンって食べたらみんな笑顔になるんです。その笑顔をずっとお客さんから出してもらえるようになればいいなって。基本はそこですね。昔から。」
<店舗情報>
■らーめん春友流
Twitter:https://twitter.com/harutomoryu
Facebook:https://www.facebook.com/ramen.harutomoryu
(取材・文・写真 KRK 平成29年5月)