Vol.19:中華蕎麦 葛

2015年8月、大阪のビジネス街に新しいラーメン店が現れた。屋号は”中華蕎麦 葛”。関西で流行りだしていた泡系のラーメンを看板にして、圧巻のコストパフォーマンス!そして店主の修行先は名店"和海"と"彩々"。そして奈良の名店"みつ葉"からの暖簾!これだけ話題豊富な新店だから、すぐに行列店になる。その噂は瞬く間に日本各地に拡がり、他府県からのお客様も急激に増えているようだ。

 今回、当サイトの特別企画"大阪ラーメン新人王2015"で見事に総合GPを受賞。関西で一番アツい店となった今、新人王のトロフィーを渡す時に少し話を聞かせて頂けた。記念インタビューなので関西ラーメンブームの立役者の一人である釈京子さんにインタビュアーをお願いした。"中華蕎麦 葛"藤原店主にKRK直撃インタビュー!


- 釈京子(以下:「釈」と略): 屋号の由来?

「僕の名字が『藤原』なんですけど、例えば藤井寺市に『葛井寺』と書いて『ふじいでら』と読むお寺があるんですね。これは古来『藤』と『葛(くず)』が同義とされてたってことなんです。そこから『葛』、読みを『かずら』にしたって次第です。」

 

- 釈:(ラーメンをする前は)元々は何をされていたんですか?

「15年間、フランス料理のコックをしていました。独立を考えていたんですが、リーマンショックとかあって厳しいな~と思っていたんです。」

- 釈:ラーメンするきっかけは

「フランス料理店の出店は厳しいと思い、現実を考え出した頃に、あるご縁から"麺屋彩々2号店"の出店準備での従業員の増員に採用していただけることになりました。そして、またまたご縁があり"和海"でお話を頂いて、"彩々"齋藤さんと"和海"木下さん両店主お話し合いの上での移籍をすることになり"和海"に入店となりました。それぞれ約1年間お世話になりました。両店在籍期間に、それぞれの2号店のオープニングにも関わらせて頂くという大変ありがたい経験もさせて頂けました。」

 

-釈: 2つのお店で修行した理由は?

「僕の年齢だと思います。両マスターが僕の年齢のことをご配慮くださり、『早めの卒業を』と考えてくださってのことだったと思います。」

 

- 釈:みつ葉さんからの暖簾は?

「”和海”を卒業後、開業までの期間、課題店や宿題店のおさらい、食べ歩きを始めました。"みつ葉"はそんな課題店、宿題店の1つで、もちろん初めての訪問ではなく、以前にもお邪魔していて好印象のお店だったんですね。でも改めて開業準備という心持ちでお邪魔させて頂くと、色々影響を受けるところがありまして、店主の杉浦さんに思い切って自己紹介を聞いて頂いたんです。そしたら本当に気さくに親身に色々聞いてくださって、食事をご一緒するまでの間柄になったんです。 暖簾は、杉浦さんが『何か要るモノはありますか?』と訊いてくださって、僕は暖簾をねだりました(笑)。そういう経緯です。」



- 釈:なぜあの低価格で?

「最大の理由は、グルメサイトの大阪府ラーメン部門1位のお店様に合わせたということ(現在は値上げされてる模様)。 そしてもう1つの理由は『スープ・前菜・メイン・デザート&お茶にパン』というセットをランチタイムだと1500円~2000円でお出しするってのが僕が以前に身を置いていた世界でのスタンダードな設定でしたから。そういう発想からの価格設定です。

 もちろんラーメンはスープが命。仕込みはフレンチより手間がかかることもあります。でも、フレンチのランチの標準的な価格で考えると、やはりこの価格(550円)でお出しさせて頂いて、僕としましては納得しています。」

 

- 釈:営業時間を11時~16時にしている理由は?

 「応募してくださったパートさんがこの時間を希望されて、その時間に合わせました。」

 

- 釈: この場所を選んだ理由は

「住居が新町と申しまして、移り住んで20年になりますが、この近所なんです。ラーメンは営業時間より圧倒的に仕込みの時間が長いでしょ。だから住居の近くで探しました。小・中・高・大期は釈さんと同じ、奈良県にいました。」



- 釈: 泡系のラーメンをメインにした理由は?

「大好きなみつ葉さんがされてるということがありますが、リアルな理由はスープは鶏オンリーなんですが、濃度のせいか、丼にカエシを入れてそこにスープを注ぐというオペレーションでは、スープとカエシが混ざらないんです。それでみつ葉さん同様、仕上げの加熱の際、小手鍋でスープとカエシをブレンダーで混ぜるという方法を採りました。その方法でやりますと、みつ葉さんのあのシフォンケーキのような泡々の状態になった。そういう経緯からです。」

 

- 釈:限定ラーメンについて?

「お客様に召し上がって頂けるレベルのモノが作れれば、是非お出ししたいです。」

- 釈:サイドメニューについて?

「神戸のローストビーフ丼をインスパイアしたモノをレアチャーシューにてお出ししています。後、実はフレンチテイストの"押し寿司"も考えています。乞うご期待です。」

 

- 釈:自家製麺について?

「ラーメンって、麺、スープ、チャーシューの3つがそれぞれ主役ですから、そのつもりで考えていたんです。この店舗が決まった時に一旦は『トイレを無しにしてでも製麺機を!』と図面を引いて頂いたんですが、やはりトイレが無いというのは現実的に無理があると思い、棣鄂さんの麺を使わせて頂いております。」

- 釈:今の行列については?

「本当に感謝でいっぱいです。"彩々"齋藤さんと"和海"木下さんにはオープンの連絡は敢えてしませんでした(9/23祝日に開業の報告に伺いました)。某ブロガーさんがブログで書いてくださって、それが出身店の発表みたいになった感じだと思います。改めまして、それぞれ約1年ずつお世話になりました。そして9/26に齋藤さんがFacebookで公式に卒業生であることを公表してくださった感じです。フェイド・イン的なオープンの方法を採ったのはオペレーションが不慣れな状態で、(ご提供スピードで)お客様にご迷惑をおかけするのを避ける為でした。

 しかしお蔭様で、6営業日目にたくさんのお客様にお越し頂けるようになりました。初日からのご来店客数は忘れもしません。30、60、30、41、34.日曜日を挟んでの6営業日目の現在のご来店を全く予測が出来ておらず、途中30分ほど一旦閉店してからの準備、再びお客様をお迎え、翌日の7営業日目は準備が間に合わず、繰り上げ閉店でした。改めまして、ブロガー様方やツイートしてくださるお客様には心からお礼を申し上げたい思いです。本当に本当にありがとうございます。」

 

- 釈:一番大切にしてることは?

「西洋料理は"同一の味覚"を好みません。つまり調味料は基本的には"塩オンリー"になります。"あわい蕎麦"はそんなコンセプトでお作りしています。それとフレンチシェフ、特に日本人シェフに至っては化学調味料どころかお醤油もタブーになっています。でも"出し蕎麦"は醤油ラーメンですので、無添加の3種類のお醤油(再仕込み・たまり・濃口)、その他の調味料も無添加・無化調のものを使っています。それと価格ですが、この価格でできる限り続けて参りたい所存です。給料目前とか関係なしに、お客様に"葛"のラーメンを召し上がっていただきたい。そういう思いでやって参る所存でございます。」



<店舗情報>

中華蕎麦 葛

大阪府大阪市西区阿波座1-12-21 喜多ビル1F

(取材・文・写真 KRK 平成28年1月)