Vol.12:らぁめん たんぼ


 和歌山県御坊市。2014年9月、海と山に囲まれたこの町に一軒のラーメン屋がオープンした。店の前が田んぼで、屋号が"たんぼ"。聞いてみると店主はあの"ちゃぶ屋"出身で、2011年に香港ミシュラン 1つ星を獲得した"香港MIST"にいたらしい。どんなキャリアを積んできた方で、どういう流れで御坊市に自分の店を持つことになったんだろう? 昼営業が終わった頃、話す時間を作って頂いた。"らぁめん たんぼ" 田甫店主にKRK直撃インタビュー!


生まれは?

「和歌山です。地元は由良ってところです。高校卒業してから測量の専門学校に入り、それから御坊市の測量屋さんへ就職しました。その会社で13年間お世話になりました。」

 

─当時、ラーメンは?

「今でもそうですけど、和歌山ラーメンってのは海南から市内の方なので、私の地元ではそんなにではなかったです。和歌山市に行ったら食べる程度でしたね。」

 

─ ラーメン屋をしようと思ったきっかけは?

「測量を13年間してきたけど、このまま測量をしてても景気も悪かったし、『35歳になるまでには動かないと』って思っていました。そのまま雇われで働き続けるなら、あと5年でも10年でも好きなことをしたい。そっちのほうが楽しいと思ったんです。その頃はラーメンも好きだったので、思い切って33歳の時にラーメン屋をやってみようと決心しました。」



─修行先をどうやって決めたんですか?

「ちょうどその頃にテレビで"どっちの料理ショー"をしていて、いろんな有名ラーメン屋さんが出ているのを観て、『どうせやるなら和歌山で和歌山ラーメンをしても面白くないし、有名な店でがっちり修行してみたい』と思いました。それで求人募集を見てとかじゃなく、インターネットで電話番号を調べていきなり"ちゃぶ屋さん"に電話しましたね。それから2週間後にはもう東京で働いていました。電話して1週間後に面接があって、すぐに働き始めましたから。料理経験は全く無かったので見習いからでした。ちゃぶ屋 護国寺本店です。その頃は本店と表参道ヒルズMISTだけでしたね。」

 

─ラーメン屋での仕事はどうでしたか?

「やっぱりしんどかったですよ。サラリーマンの時は8時半から17時半ってのを13年間していたのに、ラーメン屋で働き始めたら8時半から23時頃まで働くって毎日になったので、体が慣れるまで1年くらいかかりましたね。」

 

─いつか独立するってのはずっと考えていたんですか?

「最初から独立志向はずっとありました。地元 和歌山へいつか帰るつもりで働いていました。」

─ちゃぶ屋では何年?

「東京で3年ちょっと。香港ミストに2年ほどですね。香港MISTは香港ミシュランで1つ星を獲得したりしてて繁盛店でしたね。」

 

─独立へ向けて、研究は?

「香港の時は忙しくてなかなかできなかったんですが、東京にいる時は休みの日に厨房を借りて研究していましたね。」

 

─その頃の同僚は?

「その頃の同僚の多くは、今、自分の店をしていますね。多むら(秋田)、鳴龍(東京)、地球の中華そば(神奈川)、たいせい(東京)、あとは沖縄のモガメンですね。」

 

─ターニングポイント?

「香港から日本に帰ることになった時ですね。和歌山へ戻って、自分の店をするって決心して、すぐに動き始めました。色々あって時間がかかってしまいましたけど。」


らぁめん たんぼ(2014年9月9日オープン)


─店の場所は悩みましたか?

「基本、御坊メインで考えていましたね。僕の実家の由良町から近いところで、市で考えたら御坊市でした。田舎ですけどね。和歌山市ってのは考えてなく、それなら大阪か東京って考えていました。親の近くにいたいという気持ちもありました。」

 

─ブランクはどのくらいありましたか?

「オープンしたのが2014年ですから、帰国してからほぼ2年ですね。」

 

─提供するラーメンは?

「ベースはちゃぶ屋からの流れがあり、いろいろと試行錯誤して、作り上げていきました。」

─屋号の由来は?

「自分の名字からです。実は違う屋号を考えていたんですが、オープン寸前くらいに、友達に『せっかくそんな名字あるのに使わないと』って言われて(笑)。店の前の田んぼは関係ないです。」

─考えていた別の屋号は?

「"創作麺工房"をちゃぶ屋の社長に使う許可をもらっていたので、考えていた屋号は"創作麺工房 青淵(せいえん)"。でも友達に『誰も読めんぞ』って言われて(笑)。」

 

─麺は?

「最初、清乃さんの自家製麺を2~3か月おろしてもらっていたけど、途中から清乃さんに京都の麺屋 棣鄂さんを紹介してもらい、今も使わせてもらっています。」

 

─自家製麺は?

「もう早くしたいです。香港にいてた時に製麺はしていたので経験はあります。環境が整えば、すぐに始めたいって気持ちです。」



─好きなラーメン屋さんは?

「東京にいた頃は"69’N’ROLL ONE"が好きでしたね。関西なら清乃さんや大阪のカドヤ食堂さんですね。何度か食べに行って、いろいろ勉強させてもらっています。」

 

─他の趣味?

「今はほとんどないですね。他のジャンルも食べていません。そんな時間がないですね。事務作業も全て一人でやっていますので。休みは仕込みだし。『営業時間が長すぎるかな?』って思ったりしてます(笑)。」

 

─お店は順調ですか?

「一時よりはお客さんも増えてきていますね。ちょっとずつ上がってきています。」

 

─和歌山系ラーメンは出さない?

「『「和歌山ラーメンは出さない』って拘ってるわけでなく、豚骨もしていこうと動いているところです。今まで豚骨の修行はしてこなかったので、手探りでちょっとずつ研究しているところです。」

─今後は?

「『「早く豚骨を出せたらな』って思っています。冬に向けて味噌も研究中。自家製麺もできれば、レジの辺りを工事して製麺機を置いてって。いろいろ計画はしている。できれば消費税が上がる前にしたいです。」

 

─拘り?

「まずオーソドックスなものを、求められている以上に極めていかないといけないと思っています。基本をしっかりし過ぎるくらい、しっかりしていくつもりです。」



<店舗情報>

らぁめん たんぼ

和歌山県御坊市財部217-2 サランバンてなんとはうす 1F

店Twitter:https://twitter.com/_mononofu_men

(取材・文・写真 KRK 平成27年10月)